1.映画『ジョゼと虎と魚たち』の詳細なあらすじ・ネタバレ結末
2.映画『ジョゼと虎と魚たち』のキャスト紹介
『ジョゼと虎と魚たち』は2003年に上演された映画です。
足が不自由で引きこもり生活を送っていたジョゼと、大学を出たばかりの普通の青年恒夫との純愛を描いた不思議な世界観をもっています。
本作は、単なる恋愛映画ではなく、「いろいろと考えさせる恋愛映画」です。
健常者と障害者との恋愛について
体だけの関係について
恋愛の駆け引きについて・・・
露骨なシーンも多く、少しエロティックな側面もある映画です。
映画『ジョゼと虎と魚たち』の簡単あらすじ
大学生の恒夫は、バイト先で明け方に乳母車を押す老婆の噂を耳にします。
やがて、噂通りの老婆に出会った恒夫が乳母車の中を見ると、そこにいたのは足の不自由な女性 くみ子(自称 ジョゼ)でした。朝食に呼ばれた事をきっかけに彼女の家を訪ねるようになった恒夫は、老婆が拾ってきた本でしか世間を知らないジョゼの純粋さに、いつしか惹かれてゆくのでした・・・
あらすじ・ネタバレ1 【奇妙な老婆の噂】
大阪の大学生 恒夫はバイト先の雀荘で奇妙な老婆の噂を聞きます。
その老婆は、必ず朝早く、乳母車を押して近所を散歩しているそうで、
「ため込んだ大金や」
「いや、あの婆さんは運び屋で、乳母車の中身は麻薬らしい」
「普通に孫かも」
「でも、10年ぐらい前から散歩してるで」
「だから、ミイラを乗せてるんやて」
と、乳母車に何が入っているのかが話題になっていました。
ある日、恒夫は雀荘のマスターの犬を散歩させていました。その途中、坂道を転がってきた乳母車に遭遇します。ガードレールにぶつかって止まった乳母車を覗き込んでみると、若い女性(老婆は「くみ子」と呼んでいた)が恒夫を怯えたような目で睨みつけていました。そして、いきなり包丁で襲い掛かってきましたが、とっさによけて無事でした。そこへ老婆が追い付いて来て、恒夫は二人を家まで送ってやりました。
乳母車に乗っていた女性は名前を聞かれて「ジョゼや」と答えました。生まれつき歩くことは出来ず、床を這って移動していました。
「家に壊れモンがおると分かると外聞が悪いさかい、あんな時間に散歩をさせてんのや」
と老婆はジョゼの事を話してくれました。
あらすじ・ネタバレ2 【ジョゼに心と胃袋を掴まれる恒夫】
数日後、再び老婆に出会った恒夫は
「朝食、食べていかへんか?イヤか?」
と誘われ、断り切れずに老婆の家に向かいました。
朝食のメニューはご飯、みそ汁、ぬか漬け、玉子焼きの簡素なものでしたが、そのおいしさに恒夫は何度も舌鼓をうちました。
「だし巻き、美味しかったです」
と恒夫が礼を言うと、台に乗ってジョゼはニンマリして答えました。
「当たり前や、私が作ったんやから・・・でも、後で腹が痛くなるかもしれん。殻に鳥の糞が付いとった。サルモネラ菌や。食中毒の4割はサルモネラ菌が原因や・・・」
学校もロクに行った事が無いジョゼでしたが、普段は外出する事もなく家に閉じこもり、老婆が拾ってきた本ばかり読んでいるので知識だけは豊富でした。
ある日、恒夫は大学のカフェで同級生の香苗と就職のことについて話していました。
恒夫には、体だけの関係のノリコと言う女友達と会った時にその話をすると
「出た、香苗のお嬢っぷり。アンタに気があるみたいやし、付き合ったら?」
と皮肉交じりに笑われてしまいます。
その言葉に触発されたのか、恒夫は香苗の事が気になり始めます。香苗も福祉関係の就職を希望しており、ジョゼの話に興味を持ってくれました。しかし、本気で付き合おうとしても香苗はキスまでしか許してくれませんでした。
ある日、恒夫は実家から届いた野菜を持ってジョゼの家に行き、料理を作ってもらって
「美味かったー」
と寝転んでいました。ジョゼは呆れながら本を読んでいましたが、ふと大好きな「一年ののち」と言う本の続編「すばらしい雲」を読みたいと呟きます。恒夫が食事のお礼代わりにと「すばらしい雲」を探して、古本屋で見つけプレゼントすると、ジョゼは無邪気に喜んでくれました。
あらすじ・ネタバレ3 【「二度とくるな!」と「ここにおって」】
さらに恒夫は、乳母車に捨てられていたスケボーを取りつけ、昼間であるにも関わらず散歩に行きます。
そしてジョゼはある自動車修理工場を訪ね、見るからにガラの悪い青年・幸治を呼び出します。幸治は
「何しに来たんや!」
と悪態をつきましたが
「また、母親にそんな事ゆうて~」
とあまり気にはしていない様子でした。訳が分からない恒夫はただ唖然と見ているだけでした。
やがて夜になり、ジョゼを連れて帰った恒夫はジョゼの祖母から
「何ちゅう事をしてくれましたんや!」
と頭ごなしに怒鳴られ、二度と来ないように言われました。
その数日後、恒夫は幸治とホームセンターで出くわします。幸治は、自分が昔ジョゼと同じ児童養護施設にいて、一緒に脱走した時に「私、あんたの母ちゃんになったるわ」と言われた過去を話してくれました。
いくら邪険にされても、恒夫はジョゼを放っておく事が出来なくなっていました。
恒夫はジョゼの祖母を説得し、市に申請して補助金ももらい、家をバリアフリーにリフォームし始めました。工事中、近所の目を気にした祖母はジョゼを押し入れに隠していました(しかし、近所の人は全員、ジョゼの事を知っていました)。
その時、香苗が見学にやって来ます。香苗は、恒夫から聞いた「どこからでもダイブするジョゼ」を一目見たいと興味津々であちこち見て回りだしました。その声を聞きながら、ジョゼは押し入れに籠ってうつむいていました。そして、夜になって再び恒夫が家を訪ねると、ジョゼは半狂乱になり、本を投げつけて「帰れ!」と恒夫を拒絶しました。祖母も「頼むから、もう二度と来んといて」と念を押されてしまいます。
数か月後、恒夫は就職活動の一環でジョゼの家をリフォームした工務店に見学に行きます。そして、そこでジョゼの祖母が急死した事を知ります。
慌ててジョゼの家に向かった恒夫に、ジョゼは生きてゆくために近所の変態に胸を触らせてこまごまとした用事をしてもらっている事を知ります。
恒夫が意見しようとしますが、何も言う暇もなく「帰れ!」と怒鳴られてしまいます。しかし、本当に恒夫が帰ろうとすると
「帰れと言われて帰るような奴は、さっさと帰れ」
と怒鳴られた後に
「ずっと一緒にいて欲しい。ここにおって」
と抱き付かれます。恒夫も抱き返し、そして二人は結ばれます。
そして、二人は一緒に暮らし始めます。
そして、ある日動物園に行きます。虎の前で怖さに震えるジョゼを見ながら恒夫が笑うと
「めっちゃ怖いから、好きな人と一緒に来ようと思っとった」
と心の内を告白したのでした。
ジョゼが近所の子供達に散歩に連れて行ってもらっている最中、突然に香苗が姿を現します。
「あの子をひとりに出来ない、とか、俺が側にいないと、とか・・・正直、アンタの武器が羨ましいわ」
「ホンマにそう思うんやったら、アンタも足を斬ったらええがな」
そう言った途端、香苗はジョゼをひっぱたきました。
あらすじ・ネタバレ4 【別れ】
二人で暮らし始めてから1年、恒夫は就職して営業マンとしての日々を送っていました。
そんなある日、法事で実家時帰る事になります。そのついでに、ジョゼを両親に紹介しようと考えていました。その事を弟に話すと
「身障者を連れてゆくなんて、本当に感動するよ。絶対に親たちも喜んでくれる。俺、応援するよ」
と、少し複雑な表情の恒夫にお構いなしで励ましてくれました。
またその頃、営業で外回りをしている最中に、キャンペーンガールとして新発売のタバコを街頭で配っていた香苗と再会します。
「恒夫君に振られてから、もうすべてがどうでも良くなっちゃって・・・」
仕事が終わった後、二人で入った喫茶店で香苗が話してくれました。恒夫は驚きながらも
「香苗ちゃんはそのままでいいと思うよ。似合ってる。俺、タバコなんか吸わないのに一個貰っちゃったし」
と笑顔で言うと、香苗もホッとしたように笑い返してくれました。
恒夫が実家に帰る前日の夜、ジョゼの所に幸治が車を貸しにやって来ました。
「お前らとうとう結婚するんか?」
と言った幸治の問いに、ジョゼは少し間をおいて
「結婚?・・・そんな訳あるかいな」
と冷めた口調で答えたのでした。
次の日になり、予定通りジョゼと恒夫は九州にむけて出発しました。
生まれて初めて旅行に出かけたジョゼは、気合を入れてゆで卵・お茶・みかんなど完璧に準備してきており、車の中ではカーナビをみて「これがカーナビかぁ・・・」と心の底から感動していました。
しかし、水族館に途中で寄ったのですが、運悪く定休日でした。楽しみにしていたジョゼは
「何で休みやねん。魚おるんやろ?見せてくれへんかな?」
と残念がっていました。
一方、楽しい雰囲気とは裏腹に恒夫の心の中には不安が募って行き、パーキングエリアでジョゼがトイレに入っている時にどうしても我慢できずに
「急に断り切れない仕事が入った」
と実家に電話をしてしまいます。電話を受けた弟は
「仕事じゃ仕方ないね。伝えとくよ」
と言った後で
「ひるんだと?」
と真意を察した言葉を発し、恒夫は何も言えずに電話を切りました。
その事を恒夫から伝えられたジョゼは、暫く不満げな顔をしていましたが、唐突に海に行きたいと言い出します。
初めて見た海にジョゼは大興奮し、恒夫におんぶされて波打ち際で海を堪能したのでした。
夜、「お魚の館」と言う名前のラブホテルと見つけたジョゼは「ここに泊まりたい」と恒夫にせがんで一緒に入ります。
二人でベッドに寝ていた時、ジョゼは恒夫に
「目を閉じて」
と頼みます。言われたとおりに目を閉じた恒夫が
「閉じてどうするの?」
と聞くと、ジョゼは
「それが私のいた世界や。音も光もなく、雨も降らんし風も吹かん。ただ時間が過ぎて行くだけや。私はその中を流されてゆくだけ。まぁ、それも悪くはないわ」
と呟いて再び恒夫に抱きついたのでした。
結末ネタバレ
それから数か月後、二人は分かれ、恒夫はジョゼの家を出てゆく事になりました。
(“別れた理由は「いろいろ」という事になっているが、実は一つだ。僕が・・・逃げた”と、後に恒夫は回想しています)
その場は二人ともにこやかで、あっさりとした別れでした。
その数か月後、香苗と歩いていた恒夫(二人はよりを戻し、同棲しているらしい)は
「ここら辺、前に恒夫君が住でいた所・・・」
と言われ、その途端に泣き出し、道端に座り込んでしまいます。
“別れてから友達になれる種類の女性もいるが、ジョゼは違った”
一方、ジョゼはあれほど嫌がっていた電動車いすを購入し、たくましく一人暮らしをしていました。
乱雑だった部屋の中も今ではキレイに片付いていましたが、事あるごとに台の上から豪快にダイブする癖は相変わらずでした。
映画『ジョゼと虎と魚たち』の主要キャスト
以下にて、映画『ジョゼと虎と魚たち」の主要キャストをご紹介しますね。
・恒夫(妻夫木聡)
大阪に住む大学4年生(作品終盤では、就職して建設会社の営業マン)。優しい人柄で、女性にもそこそこモテる様子だが、いざとなると意気地がない。
・ジョゼ/くみ子(池脇千鶴)
足が不自由な女性。祖母が拾ってきた本を読む事、料理、乳母車に乗って散歩をするのが好き。本を暗記するほど何度も読んでいるので知識はあるが、祖母が彼女の存在を隠したがっているせいであまり外に出られず、実際の経験が圧倒的に足りない(学校にもロクに行っていない様子)。
・香苗(上野樹里)
お嬢様体質の大学4年生。ジョゼの事を興味本位で見たがったりしていたが、恒夫を取られたと知って激怒する。そして、それが原因で人生の歯車が狂いだす。
・ジョゼの祖母(新屋英子)
ジョゼと二人暮らしで小さな長屋に住んでいる。ジョゼの脚の事を「役立たず」「こわれものの」「世間に申し訳ない」と恥じる余り、ジョゼの存在をひた隠しにしている。
・幸治/こうじ(新井浩文)
昔、ジョゼと同じ施設にいた少年。一緒に逃げ出したこともある。ガラは悪いがジョゼの事を心配している面もある。現在は整備士として車の修理工場で働いている。愛車はゾク車。
映画『ジョゼと虎と魚たち』のまとめ・感想
優しくてエッチな事が大好きな大学生 恒夫が、足が不自由だが本を読みまくって偏った知識を持っているジョゼと出会い、愛し合っていた筈なのに別れてしまうまでの様子を描いています。
恒夫は少しおおざっぱだが優しい性格で、そこに惹かれる女性も多いようです。実際、体だけの関係のノリコ(江口のりこ)というガールフレンドもいます。
しかし、ジョゼと出会い、純真さと知らないものに素直に驚ける可愛らしさを併せ持った彼女に段々と惹かれてゆきます。
劇中では刺激的な場面や生々しい会話も出てきますがが、あけすけでリアルな感じがしました。
結局、恒夫はジョゼの内面をこれ以上ない位に愛していたのですが、足が不自由と言う外面的なハンデの為に将来への不安が募り、それに負けてジョゼと距離を置くようになってしまったように見えました。
登場人物全員が恋愛に対して何処か不器用で、赤裸々に心をぶつけ合っているのが新鮮で、良い事ばかりではない、恋愛の自分勝手さや駆け引きを駆使した計算高い一面を見せられたような、人の心の予想通りに行かない難しさを教えてくれているような、また見たくなる作品でした。