『真夏の航海』のあらすじ・読みどころ|トルーマンカポーティーの小説

こんにちは。たかりょーです。(@RyoooooTaka)

真夏の航海ってどんなストーリーなの?

真夏の航海はどこが読みどころなの?

今回はこんな方に向けた記事をご用意しています。

真夏の航海はアメリカの小説家トルーマンカポーティ(1924〜1984)の作品。

トルーマンカポーティは、オードリーヘップバーンが主演をつとめた映画「ティファニーで朝食を」の原作者ですね。

数十年前の作家さんですが、海外だけでなく、日本でも今なおを根強い人気のあるアメリカ作家です。

真夏の航海の基本情報

まずは真夏の航海の基本情報をおさえておきましょう。

作品名:真夏の航海
著者:トルーマンカポーティ
訳者:安西水丸
ページ数:日本語
出版社:講談社文庫
スタイル:文庫本(単行本もあり・ランダムハウス講談社より出版)
出版月:2015年3月13日
定価:本体759円+税

本作はトルーマンカポーティの失われた処女作と言われており、なんと10代後半という若さで書き上げた作品です。

カポーティ自身は出版したくなかったので、死後、2004年に原稿が発見され、オークションを経て、カポーティ財団が出版しました。

ちなみに翻訳者の安西水丸さんはカポーティの大ファンで、その他、多くの知識人で人気があるアメリカ作家です。

真夏の航海のあらすじ

物語は1945年の夏のニューヨークが舞台。

主人公グラディーは17歳の上流階級のプロテスタント。華々しい社交界デビューを間近に控えています。

親に反発心を抱くグラディーはバカンスで両親と訪れる予定だったフランス旅行を断固拒否し、1人ニューヨークに残ります。

両親が不在の間、クラディーは数ヶ月前に出会った駐車場係員クライド・マンザーとひそやかにロマンスを育む予定だったのです。

ニューヨークの夏が深まるにつれ、グラディーとクライドのロマンスも熱気を帯び、危険な恋にどんどん深入りします。

マンハッタンとブルックリンという文化的な格差を背景に、厳しい現実に直面しつつも、真実の愛を求める2人。

恋の甘さに浸っていた時間はあっという間に過ぎ、いつしか2人の恋物語は陰りを帯びていきます。

真夏の航海の読みどころ

それでは真夏の航海の読みどころをご紹介しましょう。

01.洗練された描写と比喩

02.主人公グレディの魅力

03.夏のニューヨークの描写

04.階級差と若さ

4つそれぞれみていきましょうか。

01.洗練された描写と比喩

トルーマンカポーティといえば、プロットの展開で読ませるというよりは、美しい文体でどんどん引き込むタイプのイメージが強いです。

真夏の航海も、他の作品と同じく、洗練された描写と比喩のオンパレードで、はっとさせられる表現がたくさん登場します。

例えば海でのシーン。

この波も、この海も、砂の上で干からびた花びらを散らした海のバラも、もしも自分が死んでも、続いていく。グレディはそのことが腹立たしかった。彼女は砂丘に立って、腿にスカーフを巻いたが、すぐに下に降してしまった。彼女が裸でいるのを見るものは誰もいなかった。そこには骨のような古い流木が散らばっていた、、、彼女は時々波打ち際まで走り、波で足をすすいだ。クレディは今まで波に不信感を持ったことはなかった。しかし今は、自分が波間に飛び込みたいとおもう度に、波はその牙を隠しているような気持ちになった。彼女が水のなかへ入っていくことができなかったように、グレディは入り組んだ部屋の敷居をまたいで入っていくことができなかった。

“海の描写”と“クレディの描写”を混ぜつつ、グレディの複雑に変化する心情を巧みに描いています。

また真夏の航海にはトルーマンカポーティの独特の比喩が多用されています。

「濁ったどぎつい色を染み込ませたカメレオンみたいに」

「熱気が都会の頭蓋骨をこじ開け、白い脳みそを露わにさせていた」

研ぎ澄まされた感性と早熟な才能で書かれた洗練された文章。

現代に生きる僕たちは、つい文体より物語の面白さをとってしまうため、表現がまどろこっしくて読みにくいかもしれません。

ただ真夏の航海はカポーティの文才を十分体感できる作品です。

02.主人公グレディの魅力

グレディは上流階級で甘やかされて育ち、いまの言葉で言うと、ちょっと変わった子。

作品の前半には、“14才の時に鋭い感受性を身につけた”グレディは、世間体ばかり気にする母ルーシーを好きではないことに気づきます。

それは恨みとか妬みとかではなく、あくまで消極的で、これまた今の言葉で言うと、なんとなく嫌い。

グレディは内相的で個人主義、冷めた性格の持ち主で、平々凡々な家族と距離を取ろうとします。

学校でもなるべくなら1人で過ごし、友達とは関わらないタイプ。だから

「グレディって何考えてるかわかんないよね?」

このように周囲の子たちからはこそこそ言われていることでしょう。

ただ冷静に見える彼女にも無鉄砲な大胆さもあり、そこに若さゆえの衝動が加わって、平坦な日常や未来を変える危険な何かを求めています。

それが既婚者とのスティーブとの関係、学校のナオミに一度だけキスをさせる、クライドに惹かれるなどの動機にもなっています。

そして作品の終わり近くには、実存的な響きがある「人生のおおかたは退屈だ」と若くして早合点してしまう。

この外と内との矛盾こそグレディを魅力的にしている要素です。

なおここに書ききれないほど、真夏の航海のクレディは魅力的に描かれています。

03.夏のニューヨークの描写

翌日の月曜日は記録的な熱波のはじまりの日になった。朝刊にはよく晴れて暖かくなるとだけ書かれていたが正午には異常事態がはじまった。オフィスで働いている人々はいじめられた子のようなしょんぼりした顔でランチからよろめき自宅にもどり、天気予報にダイヤルを合わせた。午後になるにつれ、暑さが被害者の口を覆う殺人者の手のように襲い、街は打ちのめされ、雑然となった、、、熱風を浴びたセントラルパークの柳は枝をだらりとさせながら多くの戦死者が散らばっている戦場を思わせた。154

真夏の航海は、ニューヨークのマンハッタンとブルックリンとを行き交う形でストーリーが進んでいきます。

物語全体を通じて、夏を感じさせる風物や情景の叙述は少ないです。

ただ上記でご紹介したように、小説内の随所で、隠喩を交えたニューヨークの夏の描写があり、それこそ“言葉の奔流”と表現できるほどの迫力感を持っています。

文章の力強さや息の長さは、カーソンマッカラーズやフォークナーに共通点がありますが、カポーティーの場合、そこに研ぎ澄まされた痛々しいほどの感性が混じっています。

真夏の航海に興味のある方は、夏のニューヨークの描写も気にしながら読んでみてください。

04.階級差と若さ

主人公のグレディは17才の甘やかされて育った上流階級の女。

かたやクライドは駐車場で働く下流階級の男。

冷静に考えれば、階級的にあまりに違う2人は、社会や親が認めるわけがありません。

すべての反対を押し切って結婚生活に踏み切るという選択もできます。

ただ長く続くわけがありません。なぜなら社会的地位が違うと、価値観や生活レベルさえも異なるからです。

しかしながら2人は若さという危うげで脆い一時の感情で大きな決断をします。(←ネタバレしないように伏せておきます)

前半〜中盤の間までは階級差など意識せず、クレディはクライドにぞっこんに惚れ込んでいる様子が続きますが、徐々に社会的にも文化的にも異なる闇の部分に気づいていきます。

光→闇に移行し、またそのコントラストが印象的で小説の面白さを格段に高めています。

まとめ

今回は、『真夏の航海』のあらすじと読みどころをご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?

天才性な文才をもつトルーマンカポーティの処女作は、その後、『ミリアム』等の短編小説、『遠い声 遠い部屋』、『冷血』という名作を生み出す原点です。

ぜひ若き日のトルーマンカポーティの声を、作品で味わってくださいね。

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