小説「グレート・ギャツビー」のあらすじ・テーマ全方位解説!【感想文用】

20世紀初頭のアメリカ社会を鮮烈に描き出した名作「グレート・ギャツビー」。豪華なパーティー、煌びやかなジャズ、そして複雑に絡み合う人間関係。これらはすべて一人の男、ジェイ・ギャツビーの、達成不可能と思われる夢への執着を描くために用意された筋書きです。

この作品を深く理解するためには何を知るべきでしょうか。本記事では、その答えるために、作品のあらすじから登場人物、テーマ、評価まで、全方位的に迫っていきます。

目次

グレート・ギャツビーってどんな小説?

「グレート・ギャツビー」は、アメリカの著名な作家F・スコット・フィッツジェラルドによって1925年に発表された小説です。この作品は、フィッツジェラルドの代表作であり、彼がアメリカ文学を代表する作家の一人になるきっかけとなった作品です。

「グレート・ギャツビー」は、夢を追い求めることの美しさと悲劇を描いた物語です。主人公のギャツビーは、豪華なパーティーを開く裕福な男として表面的には成功しているように見えます。しかし、彼の真の目的は、かつての恋人であるデイジーへの愛を再燃させること。この執念深い夢追い人の姿が、アメリカンドリームの破綻を象徴しています。

作品は、ギャツビーの夢が結局は達成不可能であること、そしてそれが彼の滅亡につながることを描きます。ニック・キャラウェイという語り手を通じて、フィッツジェラルドは豪華な1920年代のアメリカ社会を生き抜くための彼自身の闘いを描き出しています。

ページ数は版によりますが、一般的には約200ページ程度となっています。

作家スコット・フィッツジェラルドとは?

F・スコット・フィッツジェラルドは、1896年9月24日にアメリカ合衆国ミネソタ州で生まれ、1940年12月21日に亡くなった作家です。

1920年代アメリカのジャズエイジの象徴的人物。当時好景気に沸いていたアメリカにおいて、妻ゼルダ・セルヤーと共に毎晩パーティーへ繰り出し、騒ぎを起こし、派手な遊びに明け暮れていました。

時代の華やかさである一方、空虚さとともに才能を浪費した世代として「失われた世代」の作家の一人とみなされています。

彼の作品は、1920年代のアメリカの豊かさと道徳的な腐敗を描くことが多く、「グレート・ギャツビー」はその代表作であり、彼の最も深く、芸術的に洗練された作品とされています。

グレート・ギャツビーのあらすじ

舞台は1922年の夏、ニューヨーク・ロングアイランド。

当時のアメリカは好景気に湧いています。

主人公ニック・キャラウェイは作家志望の若者。ウォール街で働くために、ロングアイランドに小さなアパートメントへ引っ越してきます。当時のウォール街には野心ある若者たちが集まっていました。

ニック・キャラウェイがそこで出会うのは、隣人であり、謎に包まれた大富豪ジェイ・ギャツビー。ギャツビーはニューヨーク郊外ロングアイランドのウエスト・エッグ海辺にそそり建つ自分の豪邸で、豪華で贅を尽くしたパーティーを毎晩のように開催しています。

その理由は一つの目的のためです。それはかつての恋人であった女性、デイジー・ブキャナンを招き寄せて、過去の愛を再燃させるため。

デイジーはニックのまた従兄であり、アメリカ有数の金持ちのトム・ブキャナンと結婚していました。(主人公のニックとブキャナンは大学時代の友人)しかしトムは傲慢で不忠な男であり、二人の愛は冷めきっていました。

物語はギャツビーがデイジーに対して5年もの間胸に秘めていた想いを聞き、ニックの計らいでギャツビーとデイジーが再会することで止まっていた時が動き出します。彼ら二人は過去の愛を思い出して、過去の愛は再び燃え上がります。

がそこで、悲劇を起こります。

それはギャツビーとデイジーがイーストエッグに戻る道中に起こります。彼らは「灰色の谷」にあるウィルソンの修理工場の近くを自動車で走り抜けていました。

その際、彼らの車はウィルソンの妻であり、ブキャナンの妻マートルに不慮の接触を起こし、彼女を事故死させてしまいました。

ギャツビーはニックに対して、実際にはデイジーが運転していたと打ち明けるも、デイジーを守るために自分が責任を負うと語りました。法的な追及を避けるために逃げるようにニックから忠告されますが、ギャツビーはそれを断りました。

マートルの夫ジョージ・ウィルソンは、トムから「マートルを轢き殺したのはギャツビーだ」という情報を教えられます。その結果、ジョージはギャツビーの自宅のプールでギャツビーを射殺した後、自らも命を絶ちます。その後、ギャツビーの葬儀が行われますが、出席者はほんの一握りでした。

グレート・ギャツビーのテーマ

僕はグレート・ギャツビーは、アメリカンドリームという大きなテーマを描いていると思っています。

このドリームとは、自由と平等を基盤に、努力と才能さえあれば、どんなに貧しい状況からでも成功を収められるという希望を表現しているものです。

しかしアメリカンドリームには光輝かしい様相とは別に、その影もあります。それこそ、ギャツビーで描いているもの。

ギャツビーは夜な夜な豪華なパーティーを開き、ニューヨーク社交界の名士たちを招いています。しかし彼の目的はただ一つ、過去の恋人であり、現在はニックの従姉であるデイジー・ブキャナンの心を取り戻すこと。これが彼の持つ執念深い、しかし達成不可能とも思われる夢です。

結局、ギャツビーの夢は悲劇的に終わります。デイジーは夫トムと共に町を離れ、ギャツビーは彼女が起こした事故の罪を被り、命を落とすことになります。一方、ニックはこの悲劇を目の当たりにした後、西部へと戻ることを決意します。

フィッツジェラルドはこの夢が結局は達成不可能なものであり、それに固執することが個人の滅亡につながる可能性を示しています。特にギャツビーのキャラクターは、不可能な夢を追い求め、それによって自己破壊を遂げるアメリカ社会の縮図となっています。

グレート・ギャツビーの登場人物

  1. ニック・キャラウェイ:語り手で、ウォール街で働く新進の金融マン。
  2. ジェイ・ギャツビー:謎多き謎の成金紳士・富豪で、ニックの隣人。
  3. デイジー・ブキャナン:ニックの従姉で、ギャツビーのかつての恋人。
  4. トム・ブキャナン:デイジーの夫で、裕福なポロ選手。
  5. ジョーダン・ベイカー:プロのゴルファーで、デイジーの友人。
  6. マートル・ウィルソン:トムの愛人で、貧しいガレージオーナーの妻。
  7. ジョージ・ウィルソン:マートルの夫で、ガレージオーナー。
  8. オウル・アイズ:ギャツビーのパーティーの常連。
  9. メイヤー・ウォルシュタイン:ギャツビーの友人で、組織犯罪者。
  10. クライド・チル:ニックの同僚で、ウォール街のブローカー。

グレートギャツビーでどんなことを学べるのか?【感想文用】

「グレートギャツビー」から学べることは多岐にわたりますが、まず一つ言えるのが過去に固執することの危険性です。

実際ギャツビーは現在に生きているようで、過去の愛を追い求めて、過去のために生きています。彼が富を築いたのも過去に愛していたデイジーを追い求めていたから。たしかにデイジーという女性が、彼の生きがい・モチベーションになっていたから、それによって巨額の富をえて富豪になりました。

しかしながら、過去に執着する姿勢が彼の滅亡につながったとも考えられます。

また、アメリカンドリームの虚無性も教訓として取り出せます。ギャツビーの物語を通じて、フィッツジェラルドはアメリカンドリームが必ずしも幸せをもたらさない、という真実を描いています。

グレート・ギャツビーの深堀ポイント

ニック・キャラウェイという人物の重要性

グレート・ギャツビーは、ニック・キャラウェイという一人称の視点から語られています。つまり僕たち読者は彼を通じてジェイ・ギャツビーという人物、そして物語全体を眺めることになります。

だからこそ、全ての出来事は、「ニック・キャラウェイの価値観」というフィルターを通して語られることになり、彼の目を通じて描かれるこの物語は、彼自身の主観性が強く入ったものになるのです。

実際ジェイ・ギャッツビー自身の心理を直接知ることができないため、真相については、いわば「空白」として残らざる終えないのです。

ギャツビーというテキストを、ニック・キャラウェイがどう読み解いたか?という物語でもあるのです。

さらに言えば、僕たち読書はニック・キャラウェイという人物をより追求することで、物語では書かれていない「ギャツビーの深層」を見つけることにもつながります。

ウエスト・エッグ、イースト・エッグとは?【緑の灯火とは?】

「華麗なるギャツビー」の中で、ウエスト・エッグとイースト・エッグは物語の背景設定や登場人物の社会的地位を描く上で重要。

ウエスト・エッグとイースト・エッグは、ニューヨークの中心部から離れたロングアイランドに存在する二つの架空の地名で、湾を挟んで向かい合っています。それぞれの地名は、それぞれ異なる社会階層を表しています。

  • イースト・エッグは昔からの金持ちが住む地域で、古い金と称される、遺産や継承によって得られた富を象徴しています。
  • これに対してウエスト・エッグは新しい金持ち、つまり自らの努力で富を築いた人々が住んでいる地域を表しており、新しい金、つまり成金的な富を象徴しています。

物語の主人公ジェイ・ギャツビーと語り手のニック・キャラウェイはウエスト・エッグに住んでいます。ここでは、ウエスト・エッグの人々が自己啓発を通じて成功を夢見る新興の富裕層であることが描かれています。

対岸のイースト・エッグに住むデイジーとトム・ブキャナンは、財産を継承した旧金持ちの代表として描かれています。

ギャツビーはウエスト・エッグの豪邸から湾を隔て対岸に住むデイジーの家(イースト・エッグ)から発せられている「緑の灯火」を見つめます。この緑色のライトは、彼が愛するデイジーの家から出ているものでありながら、ギャツビーの未練や憧れだけでなく、富を形成した成金の立場として、生まれながらの金持ちへの憧憬があると考えています。

灰色の谷とは?

「灰の谷」は、「華麗なるギャツビー」の中で登場する地域。

意味合いとしては、その名の通りであって、灰色でゴミや砂塵が舞い、生活が停滞している貧しい地域を指します。

位置関係としてはニューヨーク市の中心部と、富裕な地域であるウエスト・エッグおよびイースト・エッグとの間に位置しています。

「灰の谷」は物語の中ではめちゃくちゃ重要な位置を占めていて、ガソリンスタンドおよび自動車修理工場の所有者であるジョージ・ウィルソンと彼の妻マートルが住んでいます。

この地域は、上流階級と下層階級との間の社会的および経済的な格差を象徴しています。つまり、「灰の谷」は、享楽的な生活を送る人々とは異なった、苦悩とを表していると言えます。

「灰の谷」はニューヨークの人々が使用した石炭の燃え殻を処理する場所として描かれており、貧困と腐敗が手を組んだ場所として、あまりにも荒涼とした場所として描かれています。

また自動車修理工場の所有者であるジョージ・ウィルソンは疲れた表情で描写されており、灰色という色彩から想像できるような、望みのなさを強調しています。

「灰の谷」は、社会的、経済的なスペクトラムの両極端を表すウエスト・エッグとイースト・エッグの間に存在することで、社会の断絶を象徴しています。それは、上流階級の享楽的なライフスタイルと対照的に、大衆の窮乏と苦境を強調しています。

ギャツビーはどうやって成り上がったのか?

物語の中でジェイ・ギャツビーがどのようにして富を得たかについては直接明言されていません。しかし、その手掛かりは登場人物の間接的な言及によって仄めかされます。

ギャツビーの財産の源泉は違法な酒の密造とギャンブル。1920年代アメリカでは禁酒法が施行されていた時代で、この禁酒法はアルコールの製造、販売、輸送を違法としたため、地下経済が活発化し、酒の密造や密売が行われました。

ギャツビーが手がけていたのは、この酒の密造や密売であったと考えられます。

「灰色の谷」にある神の目とは?

「華麗なるギャツビー」に登場する「灰色の谷」は、物語の象徴的な場所で、そこに立っている巨大な看板は「神の目」として描かれています。

この看板はかつての眼科医の広告で、大きなメガネをかけた目が強調されています。マートル・ウィルソンが車に轢かれた場面は、この看板、つまり「神の目」の下で起きます。

この「神の目」は、神が全てを見ているという象徴であると同時に、誰もが嘘を見抜けず、真実を語る者だけが異常者とされる社会への批判でもあります。神は見ているだけで何もしてくれないという無力さや諦観も象徴しています。

物語の中で、ギャツビー以外の全ての人物は空虚として描かれています。ギャツビー自身も虚飾で覆われていますが、彼の未来への希望だけは本物でした。そのため、物語の語り手は彼に「Great(偉大な)」という形容詞をつけます。これは、嘘と虚飾が渦巻く20年代の中で、唯一真実を追い求めていたギャツビーが本当に偉大な人物であるという物語の主題を象徴しています。

グレートギャツビーの豆知識!

グレートギャツビーとはどういう意味ですか?

「グレート・ギャツビー」は、原題である”The Great Gatsby”を直訳したもので、直訳すると「偉大なギャツビー」となります。ここでの「偉大」は、ギャツビーの豪華な生活や彼が持つ夢を指していますが、同時に彼の悲劇的な結末を予兆するものでもあります。「グレート」はギャツビーの野心や、花火のような人生の一瞬への美しさ、夢追い人としての生き方を強調する一方で、彼の人生がもつ哀愁や虚無感を象徴しています。

グレート・ギャツビーのモデルは誰か?

フィッツジェラルドが「グレート・ギャツビー」の主人公、ジェイ・ギャツビーのモデルにした人物として具体的に名指しされている人物はいません。しかしながら、彼の作品は一般に彼自身の経験や観察に基づいていると広く認識されています。そのため、ギャツビーのキャラクターは、フィッツジェラルド自身や彼の周囲の人々、そして1920年代のアメリカ社会全体からインスピレーションを得ている可能性が高いです。一部の研究者たちは、フィッツジェラルドの友人であるビジネスマンのマックス・ガーツをモデルにしたとの説を提唱しています。

グレート・ギャツビーの評価

「グレート・ギャツビー」は、その深遠なテーマと洗練されたプローズで広く認識されています。多くの批評家と学者がこの作品をアメリカ文学の中でも最も偉大な小説の一つと評価しています。また、フィッツジェラルドの洞察力と彼が描き出す1920年代の社会風俗についても高く評価されています。

グレート・ギャツビーの他の作品との関係

「グレート・ギャツビー」とフィッツジェラルドの他の作品は、テーマや時代背景において関連性を持っています。

例えば、

  • 「夢を追いつづける若者」
  • 「過去への憧れと固執」
  • 「アメリカンドリームの破綻」
  • 「富と地位、そして愛の追求」等々。

フィッツジェラルドの小説は一貫してこれらのテーマを探求しています。特に、「夜はやさし」や「パラダイスを追いかけて」などの作品でも彼の思想が反映されています。

そして重要なのはフィッツジェラルドの作品群は、彼自身の人生と密接に結びついている点。

フィッツジェラルドの個人的な経験や彼が生きた時代、彼の周囲の人々や社会状況から直接的な影響を受けています。そのため、「グレート・ギャツビー」を読むことは、フィッツジェラルドの他の作品を理解し、彼の思想を深く掘り下げる手助けとなります。

なお、「グレート・ギャツビー」の成功は、フィッツジェラルドの作家としての地位を確固たるものにし、彼の他の作品に対する関心を喚起するのに大いに寄与しました。また、その洗練された文体と深遠なテーマは、他の作家にも大きな影響を与え、彼の作品全体が20世紀のアメリカ文学を形成する上で重要な役割を果たしました。

以上、フィッツジェラルドと彼の代表作「グレート・ギャツビー」についての概観をお伝えしました。舞台となる時代背景や登場人物、テーマなど、物語がもつ多層的な意味を理解することで、一層深い読書体験を得られることでしょう。是非、あなた自身の目でその魅力を確かめてみてください。

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この記事を書いた人

読書好きブロガー。とくに夏目漱石が大好き!休日に関連本を読んだりしてふかよみを続けてます。
当ブログでは“ワタクシ的生を充実させる”という目的達成のために、書くを生活の中心に据え(=書くのライフスタイル化)、アウトプットを通じた学びと知識の定着化を目指しています。テーマは読書や映画、小説の書き方、サウナ、アロマです。

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