小説「モモ」あらすじ完全版・考察【要約や読みどころを丁寧に解説】

この記事は下記のような方におすすめです。

  • 「モモ」の読みどころを分かりやすく解説してほしい!
  • 「モモ」のどこを読めばいいのか(読みどころ・POINT)
  • 「モモ」を読んだ人の生の感想。

について、説明します。

モモは、「時間どろぼうとぬすまれた時間をとりかえす、女の子の不思議な物語」です。

でもそれ以上に、時間に追われて、効率性を重んじる社会に生きる僕たちは、絶対に一度は読むべきほど多くの含蓄の深い小説でもあります。

今を生きる私たちに、時間を超えて大切なことを教えてくれます。

目次

モモってどんな小説なの?

『モモ』はドイツの児童文学作家、ミヒャエル・エンデが手掛けた児童文学です。

1973年に刊行され、翌1974年には「ドイツ児童文学賞」を受賞しています。

小学生でも読めるような簡単な文章で書かれています。

でも大人の僕たちにも、心にグサッとささる非常に含蓄に富んだ小説です。

世界各国で翻訳されていますが、特に日本での人気が非常に高いです。

ノーベルという領域を超えて、ビジネスマンや経営者といった、いわゆるリアリストな方々の教養書としての人気も高くて、ジャンルを問わず多くの読書家に愛されている小説です。

CHECH!

ちなみに累計発行部数については日本がドイツに次いでなんと2位!作家のエンデは自作『はてしない物語』の翻訳した佐藤真理子さんと結婚しています。

モモのテーマは?【何を伝えたい作品?】

「モモ」は「時間」そして「耳を傾けることの大切さ」=「傾聴する」、そして「人生を楽しみ、思い出を作ることの重要性」がテーマになっています。

「時間」は、時間を無駄にせず、賢く使うことの大切さを。

「傾聴する」は積極的に人の話に耳を傾けることの大切さ、そしてそのことが人に幸せをもたらすこと。それは今この瞬間に感謝し、他人の意見に耳を傾け、愛する人と有意義な思い出を作ることにつながります。

便利になった時代。時間について真剣に考えることが少なくなり、人間本来の生き方を忘れてしまっている私たちこそ読むべき名作です。

モモはこんな人におすすめだよ

  • 毎日時間に追われてあくせく生きている人
  • 時間について改めて考えたい人
  • 純粋に面白い作品を読みたい人

モモのあらすじ簡単要約

舞台はイタリアを思わせるどこともわからない国。

現代を思わせるが、特定の時代を感じさせない。

町外れの廃墟となった円形劇場あとにすみついた少女モモ。

廃墟下の穴蔵のなかで身は粗末で裸足。だが目は綺麗な黒い目。

彼女は施設から逃げたしてきた。街の人々は孤児の彼女をかわいそうだからと家に引き取ることも考えるが、モモはひとりで暮らしたいという。

彼らは相談して、みんなで面倒を見ることに。寝床をこしらえて、食べるものをもってくるなど住みやすい環境をこしらえて、親切にする。これをきっかけにモモと街の人たちの友情がふかまる。

彼女には得意なことがある。それは「人の話を聞くこと」。街の人達は、モモに話を聞いてもらうだけで心に「余裕」が生じ、悩みが小さくなっていくのだ。

町の人たちはことあるごとにこういう。「モモのところに行ってごらん!」。不思議な力を持つモモは、街の人にとってかけがえのない存在になっていくーー。

そんなある日、街に灰色の男たちがやってくる。彼らは、町の人々から「時間」が奪う。豊かになること以外に使う時間は無駄なものだと人々を説得し、人々に「時間を倹約」し、自分たちに預けることを勧める。そうやって節約した時間は「時間貯蓄銀行」へ。

人々は「時間どろぼう」に時間を搾取され、忙しくなり、心の余裕をなくす。

だがそんな灰色の男にも危険視する人物がいる。それはモモだ。彼女は人の話をきく能力がある。そして時間を使うことも。

実際彼らの仲間であるナンバーBLW/553/ cは彼女の聞く力にやられて、灰色の男の秘密をばらしてしまう。(彼はゴミ山で裁判にかけられて、命と言っても過言ではない「時間」の給与を一切の停止させられてしまう)

モモを捕まえようと、灰色の男たちが彼女をおいかける。時間貯蓄銀行の本部からは、大動員の命令が発せられあらゆるところで目を光らす。彼らの目はすべて、ほかの活動を中断してモモの捜索に全力をあげるように、通りという通りには、灰色の男たちがひしめく。家々の屋根の上にも、地下の下水、道にも彼らはたくさんすわりこんでいる。鉄道の駅も、飛行場も、バスも、電車も、ひと目につかないようにして監視。

そんななかモモのもとに、カメのカシオペイアがあらわれる。「ついてこい」というカメに導かれ、「時間の花の国」に到着する。そこで待っていたのはマイスター・ホラ(正式名称をマイスター・ゼクンドゥス(秒)・ミヌティウス(分)・ホラ(時間))彼は「時間を司る」神のような存在だ。

彼はモモに言う。「もし人間が死とはなにかを知ったら、こわいとは思わなくなるだろうにね。そして死をおそれないようになれば、生きる時間を人間からぬすむようなことは、だれにもできなくなるはずだよ」と。

そして時間の国で「時間の花」をもらう。そしてモモはすみかである円形劇場へ戻ってくる。

だがときは同じくしてモモがいなくなった町は変わり果てている。ジジは有名な話家(物語を話す人)になっているが心は寂しい詩人家に。ヘッボ爺さんはモモを探して警察にいったが、最終的には精神病院へ。そしてモモを助けるという約束で灰色の男たちと契約し、せかせかと働く身へ。仲の良かった子どもたちは、養老院へ。

さらに「灰色の男たち」は、時間の花を奪いとろうとモモを追いかける。灰色の男たちに時間を奪われた友人たちを助けようとモモは奮闘するーー。

モモの登場人物を紹介します!

モモ

円形劇場にひとりで住む。出生地も名前も不明。「モモ」という名前は自分で付ける。

彼女の得意なことは、人の話をきくこと。

街の人達はモモに話を聞いてもらうと、分別がついたり、決心ができたり、気持ちが明るくなったりと「心が軽くなる」そんな不思議な能力を持っている。(数字を表す言葉をほんのわずかしかしらない)

ベッポ爺さん

無口でちょっと変わった、モモの親友であるおじいさん。

ゆっくりと物事を考え、ゆっくり話す。

人一倍モモのことを心配する。

ジジが灰色の男たちと戦おうという中、冷静に戦いに反対する立場をとっていた。

ゴミ山において灰色の男たちの裁判をたまたま目撃し、モモが危険にさらされるのをいち早く察知した。

ジジ

モモのもう1人の親友で、観光ガイドの仕事をしている。本名はジロラマ。

おしゃべり好き。本当かどうか分からない話(物語)をして、人を驚かせたり、喜ばせたりするのが得意で何よりも好き。

楽観的な性格で、現実に起こることをすべて芝居であると考える。

日曜に車の解体工場の道具置き場で部品が盗まれないかを見張る仕事もしている。

彼には金持ちになりたいという夢があった。そうして灰色の男たちに叶えられたが、自分の力ではない

庭園に囲まれた美しい家に住み、金の皿で食事をして、絹の布団で寝たいと思っている。

モモと一緒にいることで素晴らしい物語を作ることができた。しかし時間銀行に貯蓄した後は、有名にはなれたが、想像力を失くし、生きる屍のようになる。

灰色の男たち

「時間貯蓄銀行」を称する集団。人間たちは彼らの姿をみることができない。

彼らに時間を奪われた人々は、心の余裕を失ってしまう。

灰色の葉巻を吸っている。人間から盗んだ時間で生きている。

ニコラ

喧嘩の件で登場する左官(建物の壁や床、土塀などを、こてを使って塗り仕上げる仕事、またそれを専門とする職人)。黒い口ひげをもったたくましい男。モモの家かまどをつくり、壁にきれいな花をえがいた。灰色の男たちのせいで町向こうの大きな住宅地で働いて羽振りはいいが、時間に追われる生活を強いられる。

「なあ、おれはいまどうなってると思う? もうむかしのようじゃないんだぞ。 時代はどんどん変わるんだ。 いまおれのいるむこうじゃ、まるっきりちがうテンポですすんでいる。まるで悪みたいなテンポだ。一日でビルの一階まるごとができあがっちまって、それが毎日、つぎつぎとできていく。まったく、むかしとはまるでちがう! なにもかも組織だっていて、手をひとつ動かすにもきめられたとおり、いいか、ひとつのこらずきちんときまってるんだぞ。P121

ニコラ、悲しき言葉

ニノ

ニコラと同じく喧嘩の件で登場する。町はずれに小さな居酒屋経営。客はたった一杯のぶどう酒をちびちびやりながら、むかしの思い出話をしてひと晩じゅうねばるようなじいさん含めて二、三人だけ。

ふとっちょのおかみさんリリアーナがいる。

モモの友だちで、これまでなんども食事を出した。

「ほんとにいいやつらだったな。」 しばらくしてからニノは口をひらきました。「おれだって、 あのじいさんたちがすきだったんだ。なあ、モモ、おれだっていやだったんだ、あんなことを……でもどうすりゃいいんだ? 時代が変わったんだ。」

「リリアーナの言うとおりかもしれんな。じいさんたちがこなくなってからは、おれにも店が なんとなくじぶんの店じゃないみたいに思えてな。ひえびえとしてるんだ、わかるかい? じぶんでももういやになったよ。まったく、どうしたらいいかわからないんだ。だがな、いまじゃどこの店だってそうやってる。どうしておれだけがちがうやり方をしなくちゃなんねえんだ?

ニノの名言

リリアーナ

ニノのおかみさん。

フージー

気の優しい床屋。年老いた母の面倒を見て、セキセイインコを買い、足の不自由な令嬢の面倒を見ていた。が灰色の時間の男と契約することで、時間節約のためにいつも暇がないと、せかせかした、意地悪な男に変貌。

クラディオ

モモの友人。トランジスタラジオをもつ少年

フランコ

パオロ

モモの友人。めがねの男の子。

マッシーモ

モモの友人。でぶな子。

ビビガール

あたしは完全無欠なお人形です。が口癖

ナンバーBLW/553/ c

モモの前に現れた灰色の男。

洒落た灰色の服を着て、手には鉛色の書類かばんをもつ。

モモに灰色の男の秘密をばらしてしまい、裁判にかけられる

亀のカシオペイア

モモを時間の国まで案内する亀。甲羅に文字が光る。半時間(30分)先の未来なら確実に見える能力をもつ。本当に起こることだけがわかるだけで、起こることを変更させられるわけではない。

友達がみんな灰色の男たちに侵略されたあとは、ただ唯一の友だちになる。

マイスター・ホラモモ

マイスター・ゼクンドゥス・ミヌティウス・ホラ。マイスターは賢者にたいする尊称。名前のゼクンドゥスは秒、ミヌティウスは分、ホラは時間と、それぞれ時間の単位を意味することがつかわれている。

時間の国へといざなう老紳士。人間たちにその人の分として定められた時間を与える、時間を司る者。

老人になったり若者になったりする。何でも見えるメガネでことの一部始終を観察する。

モモの読みどころ解説【深読み・引っ掛かりポイント】

1.灰色の男たちとは?

人間たちの弱みにつけ込み「時間」を倹約させることで、時間を奪う「時間泥棒」。

それが灰色の男たちです。

灰色の男たちは、すべて時間=数字で換算して、まるで時間が利益を生む根源のような扱い方をしています。

彼らは灰色のスーツを着て、灰色のタバコを吸う。そして無名性をまとったような灰色の顔色をしたている。

彼らは現代でいうような銀行のような「時間貯蓄銀行」の銀行員。

人間たちは時間を彼らに預けます。ただ僕たちの知っている銀行とは全く違います。なぜなら一度預けた時間は永遠に引き出せないからです。

灰色の男たちは人間に預られた時間は、乾燥させられ、彼らが吸う葉巻に姿を変えます。

それが時間泥棒達の命、エネルギーなのです。

「時間を預ける」の象徴とは?

人間たちは己の夢や財産のために、灰色の男たちに一見ムダと思えるような時間を売って、それを財産にして自分の欲を叶えようとします。

それは「未来のため」であったり、「将来にあるより良い暮らしのため」に時間を売るのです。

しかしながら時間を売った人間たちは大切な友人と語り合う時間、思索する時間さえも失ってしまい、無我夢中で「労働する」ようになります。

登場人物たちはいざしらず、読み手である僕たちにとって時間泥棒に時間を奪われ労働している人たちは、生きることの意味を見失っている人、に見えてしまう。

灰色の男たちに支配された人々の様子は、まるで現代社会を思わせます。現代社会は「効率」「コスパ」などが重視される風潮があります。物語内では「1秒でも無駄にしないように」とありますが、彼らは時間を無駄にしないようにこだわるあまり、心に余裕がなくなります。

つまり灰色の男たちは人々から時間を奪っているのですが、それはつまり、時間だけでなく、その人にとってもっとも大切なものを奪っているということ。しかし誰もそのことに気付かないのです。

灰色の葉巻とは?

灰色の葉巻は、人間の心に心の中に忍び込んで、その中にある「時間の花」をむしり取ってつくります。灰色の男たちは、灰色の葉巻から精気や命を養い、生きながらえています。

彼らは人間と契約することで、時間の花をどんどん奪い、彼らの生命には欠かせない灰色の葉巻を絶えず生成しています。

逆に灰色の葉巻がなければ彼らは生きることができません。透明になってこの世から消えてしまうのです。

例えば葉巻を取られた灰色の男たちの様子を下記のように記しています。

葉巻をとられたほうはきゅうに力がぬけたようになって、両手をまえにつきだし、顔にあわれっぽい、おびえきった表情をうかべて、あれよあれよという間にそのからだが透明になり、ついには消えてしまいます。あとにはなにひとつ、ぼうし さえのこりません。

つまり人間から時間を奪う彼らの行為とは、生きるか死ぬかがかかった命がけの行為なのです。

モモの能力って一体・・・何がすごいの?傾聴する

モモは賢いわけでも、腕っぷしが強いわけでも、ましてや絶世の美女でもありません。

でも彼女には誰にも負けない長けた能力があります。それは「傾聴力」です。(この力が最終的に世界を救うことにもなります!)

小さなモモにできたこと、それはあいての話を聞くことでした。だれにだってできるじゃないかって。それはまちがいです。ほんとうに聞くことのできる人は、めったにいないものです。そしてこのてんで、モモは、ほかにはれいのないすばらしい才能をもっていたのです。

モモは頭がいいわけでも力が強いわけでもないが、とにかく人の話を聴くことが上手い。

話を聞いてもらった人は、モモに話をしながら自ずと心を開いていきます。

ある人は自分の行いを懺悔したり、ある人は自分一人では決して思いつかなかった壮大なアイデアを思いつき自分の進むべき方向に気づいたり。

つまりたちどころに、悩みや問題を解決していくのです。

それは敵である灰色の男たちだってそうです。

あのときわたくしの頭がまったくおかしくなっていたと情状もご酌量ください。 あの子がわたくしの話をきく聞き方は、わたくしからなにもかも吐きださせてしまうような一種独特の聞き方なのです。どうしてそういうことになってしまったのか、わたくしはじぶんでもわかりません。しかし誓ってもうします。これはうそではありません。

かといってモモは決してアドバイスをするわけではなく、多くを語りません。

町の人々はなにか事が起きたときにある、「モモのところに行ってごらん!」と、まるで合言葉のようにいいます。

ではなぜ悩みをもつ彼らは、モモは「ただいるだけ」で「話をしない」(=アドバイスをする)わけでもないのに、たちどころに問題を解決し幸せになっていくのでしょうか。

それはモモに話すことは、自分自身と対話につながるからです。

つまりモモはある意味鏡のような役割であって、実際、多くの解決は話し手のなかにあるわけで、モモは相手の分身のような役割になって、己の心の奥底にあるものを導き出してくれるのです。

このようにモモという人物の聴くを通じて、多くの人たちは自分自身を見つけ出します。

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この記事を書いた人

読書好きブロガー。とくに夏目漱石が大好き!休日に関連本を読んだりしてふかよみを続けてます。
当ブログでは“ワタクシ的生を充実させる”という目的達成のために、書くを生活の中心に据え(=書くのライフスタイル化)、アウトプットを通じた学びと知識の定着化を目指しています。テーマは読書や映画、小説の書き方、サウナ、アロマです。

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