この記事は下記のような方におすすめです。
- 「デイヴィッド・コパフィールド」の読みどころを分かりやすく解説してほしい!
- 「デイヴィッド・コパフィールド」のどこを読めばいいのか(読みどころ・POINT)
- 「デイヴィッド・コパフィールド」を読んだ人の生の感想。
について、説明します。
デイヴィッド・コパフィールドってどんな小説?
「デイヴィッド・コパフィールド」は、イギリスの古典作家チャールズ・ディケンズによって書かれた半自伝的な小説。
舞台は十九世紀のヴィクトリア朝ロンドン。彼独特のユーモアあふれる人物描写と、骨太なストーリー展開の中に様々なキャラクターが交錯する人間模様の描き方が秀逸の作品。
1849年から1850年にかけて連載され、1850年に書籍として出版されました。この作品はディケンズの最も人気のある小説の一つであり、彼自身も「お気に入りの子」と評しています。
自分の分身としてのデイヴィッドを「理想の大人」に育てて幸福な結末を迎えさせるまでの物語である。
この作品は、ビルドゥングスロマン(成長小説)というジャンルに属します。デイヴィッドの生涯を描くことで、読者は人間の成長や変遷を体験することができます。
デイヴィッド・コパフィールドの深堀ポイント
半自伝的な要素を多く含んだ作品
『デイヴィッド・コパフィールド』は、チャールズ・ディケンズの半自伝的な要素を多く含んだ作品とされています。ディケンズ自身も、この作品を「お気に入りの子」と表現しており、彼自身の経験が多く反映されていると広く認識されています。デイヴィッド・コパフィールドの物語は、彼の生い立ちから大人になるまでを描いており、多くの場面でディケンズ自身の経験が基になっています。
デイヴィッドが経験する貧困や労働、そして彼が出会うさまざまなキャラクターは、ディケンズ自身の人生のエピソードを反映しています。例えば、デイヴィッドが10歳の頃の自分について述懐するシーンなど、彼自身の子ども時代の体験が基になっています。ディケンズは、自分の過去の経験をもとに、社会問題を浮き彫りにし、その不平等や不正を批判しています。
世間からの評価は?
デイヴィッド・コパフィールドは、S・モームも“世界の十大小説”のひとつに選んでいます。
またディケンズを愛してやまないアメリカ作家ジョン・アーヴィングは、自身の「サイダーハウス・ルール」の中で孤児に読ませるべき小説として、「デイヴィッド・コパフィールド」と「大いなる遺産」を挙げています。
子供に甘い多くの親の例に漏れず、小生にも心ひそかに可愛い子というものがあります。その子の名前はデイヴィッド・コパフィールドです。
デイヴィッド・コパフィールドのあらすじ(要約・プロット)
物語は主人公、デイヴィッド・コパーフィールドが自身の人生を振り返る形で語られます。彼は父の死後、イングランド、サフォークのブランダーストーンで母と親切な家政婦クララ・ペガティと共に幸せな幼少期を過ごしますが、母がエドワード・マードストーンと再婚するとその生活は一変します。デイヴィッドはペガティの家族と一緒にヤーマスを訪れ、そこで新しい冒険が彼を待っています。物語は彼の学校生活、ロンドンでの労働、そして彼が作家として成功を収めるまで、多くの困難と成功を通して彼の成長を追います。
デイヴィッドの物語は、彼自身の視点から幼少期の体験、工場での労働、学業、そして小説家としての成功など、ディケンズ自身の初期の経験が多く含まれています。虐待的な継父と貧困な労働環境に耐えながらも、彼は教育を受け、社会の様々な階層を渡り歩きながら成長し、人間関係を深め、最終的には成功した作家となります。物語はデイヴィッドの生い立ちから始まり、彼が多くの困難を乗り越え、最終的に成功を収めるまでを丁寧に描いています。
大きなプロットとしては基本的には下記です。
デイヴィッドの幼少期
デイヴィッド・コパフィールドは、父の逝去を経て、母クララと家政婦ペゴティーの手で大切に育てられる。だが、クララが冷徹なミスター・マードストンとの再婚を果たすと、デイヴィッドの日々は劇的に変化する。マードストンと彼の姉による厳格な教育と虐待を受けつつも、デイヴィッドは成長の道を歩む。特定の出来事が契機となり、彼は寄宿学校セーラム学園へと送り込まれる。この場で彼はスティアフォースとトラドルズという二人と知り合い、特にスティアフォースとは深遠な友情を築く。
ペゴティーの家族とスティアフォースの事件
ペゴティーの家族は漁師をしており、ヤーマスという海辺の町で暮らしていました。デイヴィッドは彼らとの時間を楽しく過ごし、特にペゴティーの姪エミリーに淡い恋心を抱きます。一方で、スティアフォースはデイヴィッドに対して影響力を持ち、彼の人生に大きな影を落とします。エミリーとハム・ペゴティーの結婚が決まるも、エミリーはスティアフォースと駆け落ちをしてしまいます。
ドーラとデイヴィッドの恋愛
デイヴィッドは成長し、法律の世界で働き始めます。彼はドーラ・スペンローと恋に落ち、結婚します。しかし、ドーラは病に倒れ、若くして亡くなってしまいます。
ミスター・ウィックフィールド、アグネス、ユライア・ヒープの物語
デイヴィッドはミスター・ウィックフィールドとその娘アグネスとも親しくなります。一方、ウィックフィールドの事務所で働くユライア・ヒープは、ウィックフィールドを陥れ、事務所を乗っ取ろうとします。デイヴィッドとミスター・ミコーバーは彼の陰謀を暴きます。
結末
デイヴィッドは作家として成功を収め、アグネスと結婚します。彼の人生は多くの困難を乗り越え、最終的には安定したものとなります。一方で、彼の人生に関わった多くの人々も、それぞれの運命を辿ります。
デイヴィッド・コパフィールドの「これがテーマ!」
- 成長と変化:デイヴィッドが幼少期から成熟期を通じて経験する成長と変化の物語です。彼は決して一人で成長するわけではなく、多くの人から愛情をもらったり、裏切られたり、信頼されたりすることで、変化していきます。もちろんデイヴィッドだけでなく周りの人々も変化していきます。
- 社会の風刺:ヴィクトリア時代の生活、女性の地位、階級構造、刑事司法制度など、多くの社会的側面に対する風刺もきいています。
- 友情と裏切り:デイヴィッドの人生における友情とともに、誰かに裏切られることもある!
- 愛:物語では多くの“愛の形”が登場する。それは恋人だけでなく、母・父の愛情や友情の愛情など。
- デイヴィッドの人生の要素: 物語はデイヴィッドの幼少期の体験、工場での労働、学業、そして小説家としての成功など、彼の人生のさまざまな要素を探求しています
- 正義と報復:物語には、キャラクターが過去の不正や裏切りに対して報復を求め、正義をウリア・ヒープやスティアフォースのようなキャラクターに対する報復や、彼らが受ける報いは、物語の中で重要な役割を果たしています。
- 親子関係:デイヴィッドの母との関係、そして彼自身が父親になった時の親子関係も重要なテーマです。親の愛情や、親が子供に与える影響、親の期待と子供の自立などが探求されています。
デイヴィッド・コパフィールドの登場人物
デイヴィッド・コパフィールドは全部で4冊ある分、登場人物が非常に多いです。そのため、この章ではデイヴィッド・コパフィールドに登場する主要人物を紹介します。
デイヴィッド・コパフィールド
デイヴィッド・コパーフィールドは、物語の主人公であり語り手でもあり、イングランド北東部、北海に面するサフォーク州のブランダーストンに生まれます。彼の父は半年前に他界しており、彼を非常に可愛がっていた変わり者の伯母、ベッツィ・トロットウッドは、デイヴィッドが女子であると確信していました。しかし、男子である彼が生まれたことに「裏切られた」と感じ、怒って即座に立ち去ります。
デイヴィッドの母親がミスター・マードストンと再婚すると、彼はマードストンから虐待を受けるようになります。その後、セーラム学園に送られ、学友スティアフォースやトラドルズと友情を築きます。学園での生活は厳しいものでしたが、彼はペゴティーの兄、ミスター・ペゴティー、その甥のハム、姪のエミリーとの交流を深めます。デイヴィッドは幸福、困難、失敗、成功などを経験しながら成長し、最終的に成功した作家となります。
クララ・コパフィールド
デイヴィッドの母親で、物語初期でミスター・マードストンと再婚します。彼女は優しく、繊細で、デイヴィッドを深く愛しています。彼女はマードストンとの間に、デイヴィッドの弟となる次男を産みますが、それから数か月後に亡くなり、次男もその約1日後に亡くなる。
エドワード・マードストーン
クララの再婚相手でデイヴィッドにとって継父になる。厳格で冷酷な存在であり、デイヴィッドに対して虐待的な態度をとる。反抗的な態度をとったデイヴィッドへの報復として友人クリークル氏が所有する寄宿学校セーラム学園に送られる。クララが亡くなった後、彼はデイヴィッドをロンドンの工場で働かせることにする。デイヴィッドが工場から逃げ出した後に、彼を連れ戻すためにベッツィー・トロットウッドの家に現れますが、。ベッツィーが追い払う。数年後、デービッドがドクターズ・コモンズで働いているとき、若くて信頼できる次の妻のために結婚許可証を取り出しているマードストーンに出会う。
ミス・マードストン
エドワード・マードストーンの姉。マードストーン氏がクララと結婚した直後に、コパフィールド家に引っ越してきて家事全般をすることに。弟のエドワード・マードストーンと同じく横暴で、意地悪で、厳格な女であり、デイヴィッドに対しても虐待めいた第どであたる。のちにデヴィッドの最初の妻であるドーラ・スペンロウの「秘密の友人」(家庭教師的な立ち位置)としてデイヴィッドと再開。その後、デイヴィッドのドーラに対する情熱的な愛の手紙を発見した人物であり、スペンロウ氏へ密通する。
ペゴティー
コパフィールド家の家政婦で、クララとデイヴィッドを非常に大切に育てていた。クララが死んだ後は、デイヴィッドにとって母親のような存在になる。後に運送屋のミスター・バーキスと結婚します。コパーフィールド家の忠実な使用人で、デイヴィッドにとっては二番目の母親のような存在。彼女は後にミスター・バーキスと結婚します。その後ミスター・バーキスは亡くなった後、ロンドンでデイヴィッドと一緒に暮らしますが、その後、故郷のヤーマスに戻って甥のハム・ペゴッティとともに家を守ることになります。大叔母であるベッツィー・トロットウッドことを心の底から恐れていますが、最終的には打ち解けた関係となる。
ミスター・ペゴティ
ペゴティーの兄で、ハムとエミリーの親類です。甥のハムと姪のエミリーが孤児になった後、彼らを親代わりとして育てる。デイヴィッドは、幼い頃、家政婦ペゴッティが故郷であるヤーマスで休暇として帰ったときに付き添いでついていくが、ミスター・ペゴティは非常に丁寧に接して心から彼を歓迎します。そこからデイヴィッドとの関係はおとなになっても続き、一度はセイラムに面会で遊びに来たことも。エミリーが大きくなり、デヴィッドの友人ステアフォースともに逃亡をしたときに、彼女を連れ戻すために世界中を旅する!最終的にロンドンで彼女を見つけて、その後彼らは豪州へ移住。
ハム・ペゴティー
ペゴティーの甥で、アムとも呼ばれる。気さくな心優しい人物であり、背が高くて力強く、熟練した船大工。エミリーに恋をし婚約までしていた。心が非常に温かい人物で、後にステアフォースと駆け落ちしたエミリーを責めることなく、彼女を待つ態度をとる。最終的にはメアリーの助けもあり、エミリーを見つけ出し、彼らを知らない豪州に新生活のために旅立つ
ミセス・ガミッジ
亭主が死んで、死んだ亭主のことを考え出したら止まらない。小言をたくさん言うお婆さん。
エミリー
彼女は孤児としてペゴティー家で育てられ、幼い頃からデイヴィッドとは深い絆で結ばれていました。彼女はデイヴィッドの初恋の相手であり、彼の無垢な愛情を引き寄せる美しさと魅力を持っています。
同じ孤児である従兄弟ハム・ペゴティーと婚約しますが、スティアフォースに誘惑され、結婚式の前夜に海外へ駆け落ちします。(彼女には広い世界を見てみたいという強い願望があったのだと思う)
ただ駆け落ちの最中にスティアフォースに見捨てられる。故郷のヤーマスには戻ることなく最終的にはロンドンへ向かい。生活苦・孤独感のなかで売春婦に見を落としかけるも、同郷であり売春婦をしていたマーサに助けられる。その後、ペゴティーと涙の再開を果たし、連れ戻され、救済されます。自分のことを誰も知らない土地へいくために、叔父とともに同行して豪州へ行きます。
マーサ・エンデル
かつてはエミリーの友人。後に悪い評判を得る若い女性。彼女が性的に不適切な行為を行っており、その結果恥をかかされたことが暗示されています。エミリーをロンドンの売春から取り戻す手伝いをするために彼女を捜していたダニエル・ペゴッティとデイヴィッドが彼女の自殺を止めた。彼女はペゴッティ一家とともにオーストラリアに移住します。そこで彼女は結婚し、幸せに暮らしています。
ミス・ベッチー・トロットウッド
デイヴィッドの大伯母。彼の生活を助ける重要な存在。妹のベッチートロットウッドの名付け親になろうとしたがデイヴィッドが困難に直面した際に彼を助け、作家としての成功を後押しします。彼女は厳しいが公正で、デイヴィッドを非常に愛しています。
アグネス・ウィックフィールド
デイヴィッドの幼い頃からの友人であり、後の妻。彼女は理知的で落ち着いた性格。物語全体を通じてつねにデイヴィッドに対して深い友情と愛情を抱く。
ウィックフィールド
アグネス・ウィックフィールドの父親であり、ベッツィー・トロットウッドの弁護士。デイヴィッドが叔母の学校に通っていますが、卒業するまでウィックフィールズ家に滞在します。ウィックフィールド氏は、自分の愛によって娘を自分に近づけすぎて傷つけてしまったことに罪悪感を感じている。この罪悪感が彼を飲酒へと導きます。弟子のユーライア・ヒープはその情報を利用してアルコール依存症と罪悪感を助長し、最終的には酩酊中に不正行為を犯したと信じ込ませ、脅迫する。彼はミコーバー氏に救われる。
バーキス
運送屋。守銭奴。ペゴッティの手作りのペストリー(お菓子)を食べたあと、彼女と結婚したいと宣言します。デイビッドに彼女を愛していることを伝え、「彼女に『バーキスは喜んでいる』と伝えてください」と依頼。 クララが亡くなった後、ペゴッティとカーターは結婚します。
ミスタ・クリークル(第一章)
セイレム塾の校長。彼は非常に厳しい人物で、デイヴィッドにとっては厳しい学園生活を送る原因の一つです。
メル先生(第一章)
セイレム塾の教師で、チャーリとも呼ばれる。彼はデイヴィッドにとっては親切で優しい存在です。
ドーラ・スペンロウ
デイヴィッドの最初の妻で、幼く無邪気な女性。彼女はデイヴィッドとの結婚生活を楽しみ、彼を愛していますが、家事などの実際的なスキルには欠けています。
フランシス・スペンロウ
弁護士、デイビッドの監督官としての雇用主。そしてドーラ・スペンロウの父親。彼はフェートンを家まで運転中に心臓発作で突然死亡した。彼の死後、彼には多額の借金があり、遺書も残されていなかったことが明らかになった。
ミスター・ミコーバー
永遠の楽観主義を備えたメロドラマチックで心の優しい紳士であり、物語通じてデイヴィッドとは友人。彼は借金で苦しむが、常に楽観的で、絶えず”すべてが上手くいく”という信念を持つ陽気なキャラクター。一度借金で首が回らなくなり逮捕されたことも・・・。彼の最大の特徴は、何があっても決して落胆しないポジティブな態度とのんきさ。デイヴィッドに対しても深い友情を示しており、物語を通じて、彼の友人として存在します。デイヴィッドは彼に対して厄介者扱いする場面はありますが、最後、ユライア・ヒープの悪性を暴き立て、アグネス含めウィックフィールド家を救い出すこともあります。性急な性格であり極めて楽天的な性格であるからこそ、失敗することも多々あります。それが欠点となり、あらゆる借金の原因になることも。麗麗と飾り立てた手紙は物語中に何度もでる。最終的に家族は立身出世のためにエミリーと同じく豪州へと旅立つ。
ミセス・ミコーバー
ミスター・ミコーバーの妻。長男と双生児、さらに一番下に子供と、物語のなかで何人も子供を産みます。ミコーバーは借金を抱えて貧乏になり、点々と移り住みますが、つねにミコーバーを信頼し、彼がなにかしらの才能がありいつか開花するであろうと信じで彼についてきます。その健気さとともに献身ぶりは
トミー・トラドルズ
セーラム寄宿学校からのデイヴィッドの友人。ステアフォースを信頼していない数少ない少年の一人であり、彼の石板に骸骨を描くことで有名。逆立つ髪が特徴。彼とデイヴィッドは青年時代に再会し、彼を支える生涯の友人になります。(反対に)彼は名声とキャリアを築くに成功し、裁判官になり、真実の愛のソフィーと結婚しました。
ユライア・ヒープ
勧善懲悪の世界観である本作において、彼は大悪党として振る舞います。下っ腹からはじまったこともあり、つねに表面上は謙虚で従順を装っていますが、内心では、成り上がろうとする大きな野心と欲望に満ちています。ひそかにウィックフィールド氏の事務所を乗っ取ろうと画策しますが、彼の偽善と計画は、デイヴィッドとミコーバー、最終的に彼の陰謀が露見します。
スティアフォース
デイヴィッドの学友であり、エミリーと駆け落ちします。彼は表面上は魅力的で紳士的に見えますが、実際には自己中心的で計算高い人物です。彼の行動は、デイヴィッドとエミリー、そしてハムに対して多大な影響を与えます。
ローザ・ダートル
スティアフォース夫人と同居するスティアフォース家の遠縁の女性。かつてスティアフォースに恋し捨てられた孤児。気性が激しい性格で、怒りの発作がでると過去にスティアフォースにつけられたあざが浮かび上がる。
エマ・ステアフォース夫人
ジェームズ・ステアフォースの未亡人の母親。裕福。息子の欠点が分からないほど息子を溺愛している。ステアフォースがエミリーと海外へ駆け落ちしたときに、恥をかかされたとエミリーを避難。(ジェームズが少女に誘惑され息子を堕落させた!と)
ドクター・ストロング
セーラム学園の塾頭で、生徒たちに厳しく接します。彼は学問を非常に重視し、デイヴィッドに対しても厳しいですが、公正な態度を持っています。彼のキャラクターは、デイヴィッドの教育と成長において一定の役割を果たします。
デイヴィッド・コパフィールドたかりょーの感想
ディヴィッドは何もできない男?
主人公ディヴィッドは、ディケンズが「理想の登場人物」と縹渺していますが、僕自身、彼が積極的に「物語」を動かしているように思えません。
物語の中で彼はあくまで、見届ける人・相談される人という立ち位置で、大きな物語の流れの中で、現場に立ち会う人物として=何も関与しない人物」として
確かに、少年時代においてはマードストンの虐待に対しても果敢に挑み、クリークル学校・徒弟時代には自分の地位を向上させようと励みステアフォースという親友と仲良くなり、最終的にはマードストンが占領する家を飛び出して、道中散々な目に遭い、ほうほうのていで大叔母ミス・ベッチー・トロットウッドの元へたどり着きます。
ここまでは彼の「主体性」が非常に強調されています。
ただその後エミリーの駆け落ち事件、ユライア・ヒープの陰謀などなど、こうしたエピソードにおいてはデイヴィッドは強く関与することはなく、あくまで見届ける人として、事件そのものを変えようとしません。
でも僕は個人的に、これこそ「語り手」としての立ち位置だと感じます。
つまり物語を動かすのは「近辺の人」たちであって、物語を紡いでいく語り手というのはあくまでエピソードの傍観者として、物語のそばにいるべきなのです。そして彼自身は中間の立場に立って、物語がどう展開していく成り行きを見守り、記述していく存在に徹するのです。(黒子のように)
(でないと、語り手自らが事件を次々と解決していく物語というのは「自慢話」になってしまいますよね)
この立場というのは、例えばグレイトギャッツビーのニック・キャラウェイ、またシャーロックホームズのワトスンにおいても同様で、語り手というのは、自分が自ら切り開くのではなく、中間の立場に立って「物語の見届け役」になるのです。(時にエピソードの元人物として自身のエピソードへの解釈は示しますが、物語を変えようとすることは基本的にはないです)
そしてディヴィッド自身、そうした事件・エピソード(多くの人々との出会いや別れ、愛と喪失)を儀式的に通過することで、目の前の出来事は変えていないけれど、自身の内面は変化していきます。それはある意味で大人になっていくことと同じですね。
一人の人物との出会いが、「人生」を良くも悪くも変える
「人生はなんの支障もなく淡々と進んでいくこともあるけど、ちょっとした偶然の出会いによって予想もつかない方向へと進んでいく」デイヴィッドを読んでいてこんなことを考えました。
この小説はとにかくさまざまな人物が登場するんですけど、登場人物のなかには「ある人」(これは誘惑者だったり。悪人であったりする)と出会うことで、彼らが思いもしなかった方向へ人生が展開することになることもあります。
例えばエミリーとペゴティー、ハムのセイラムに住んでる家族たち。彼らは漁師としてヤーマスという故郷で海とともに生きる家族であって、デイヴィッドが「ここの家族になりたい!ここで住みたい!」と思うほど魅力されて、誰もが羨む幸福な人生を送っていたんです。ペゴティーは自分の娘ではないエミリーを、目に入れても痛くないほど心の底から可愛がり愛していて、ハムもそんなエミリーに完全に惚れ込んで大切に見守っている。エミリーは愛されまくった女性としては当然ながら、お転婆なところもあるのだけれど、ヤーマスという世界で生きることに満足して暮らしていたわけです。
でもそこにステアフォースという見かけでは好人物なんだけど、エミリーが今まで接したことのない圧倒的な魅力をまとって、彼女に近づくる男性がいます。彼女は彼に魅了されるのですが、その理由は、”外の世界”を知る人物だからです。つまりヤーマスという幸福だけど小さな世界の”外”には、彼女が知らない、いろんな楽しい未知のことがあるわけで、物語ではステアフォースとエミリーが喋るシーンはないのですが、エミリーがステアフォースに魅了されたのは、世界にはこんなことがあるんだ。ここでは体験したこともないことがあるんだ、というふうに”外の世界”を伝えたわけです。
そして結婚をすぐに控えていたエミリーは、ステアフォースとともにヤーマスを飛び出します。その後、ヤーマスの人々の人生は大きく変わりしていきます。
エミリーはそもそも従兄弟でもあるハムと婚約までして、彼らは祝福モード一色だったわけですが、エミリーがいなくなることになって、ハムは事実上婚約破棄されたわけですし、ペゴティーは彼女を連れ戻すために世界を回り始めるわけです。最終的にエミリーは戻ってくるんですが、ペゴティーは傷心しきった彼女を助けるためヤーマスという故郷を捨てて、なんのゆかりもない豪州へ旅立ちます。そしてハムとは離れ離れになりますし、ハム自身最終的に死んでしまう。。。
ステアフォースと出会う前に、彼らはそんな人生を歩むなって全く思ってなかったと思います。
ここで僕が伝えたいのは「人生って変わるんだよ」という事実よりも、たった一人の人物に出会うだけで簡単に方向性が変わってしまうという人生の儚さ・ゆらぎやすさです。
何も考えずに生きていると、「このまま5年、10年と人生過ぎていくんだよな〜」みたいな感覚になってしまうと思ってしまうんですけど、全くそんなことはなくて、人物との出会いだったり、ある一つの出来事があるだけで、「全くこんな人生予想してなかったんだけどな」となる可能性だってあります。
これは僕たちの人生で考えるなら、ある日変な殺人事件に巻き込まれる可能性だってあるし、反対にとても素敵な人物とであって暗い人生が明るく照らされることもある。
デイヴィッド・コッパーフィールドは、ウィックフィールド家におけるユライア・ヒープ、コパフィールド家におけるマードストンなど彼らの幸福を変える厄介な人物もいれば、デイヴィッドにおけるミス・ベッチー・トロットウッド、ミスター・ミコーバーにおけるデイヴィッドのように、素敵な人生へと変える人物もいます。
このように「人」が「人の人生を変える」ってこと、そして人生は固定ではなく常に変化するものであること、学べる作品なのです。
策謀と偽善の化身ユライア・ヒープ
この作品の裏の主人公として、僕は間違いなくユライア・ヒープをあげます。
ユライア・ヒープは、『デイヴィッド・コパフィールド』における裏の主役とも称されるキャラクターで、彼の策略と悪魔的な特性が物語に濃厚な影を落としています。
彼は、策略と偽善に溢れる、悪魔的なキャラクターで、彼の行動の全ては「自身の低い社会的地位を向上させること」に尽きます。その目的を達成するために、力のある者(例えばデイヴィッド)に対しては卑屈に振る舞い、弱い者に対しては無慈悲であり、他人を利用して自身の地位を築くことを躊躇いません。
彼の恐ろしさは、人々の弱点を巧妙に利用するところにあります。例えば、ウィックフィールド法律事務所では、事務所の経営が傾くと、彼はアグネスの父ウィックフィールドの心と信頼を巧みに操り、共同経営者となります。事務所の実質的な支配を手中に収め、さらにはウィックフィールドの娘、アグネスを手に入れようとします。
ウィックフィールドは、ユライア・ヒープを心の底から拒絶しながらも、彼に依存し、次第に彼に支配され、本来の自分を失っていきます(まるで魂を吸い取られていくかのように)。
“共同経営者”という“契約”は、ファウスト博士が悪魔メフィストフェレスと結んだ契約を彷彿とさせ、ユライア・ヒープは寄生虫のようにウィックフィールド家に取り憑きます。
彼の計算高く、抜け目ない性格は、『デイヴィッド・コパフィールド』において、デイヴィッド・コパフィールドにおいて暗い面としてのコントラストをもたらし、物語にメリハリをつける存在として欠かせません。
そして僕が思うのは、ユライア・ヒープのような人物は、あらゆる時代において存在しており、現代においても人の弱みに漬け込んで、心を蝕んでいく寄生虫=“成功者”として存在しているのでは?と僕は思っています。
ユライア・ヒープは、『デイヴィッド・コパフィールド』において、裏の主人公とも言える存在であり、彼の悪魔的な特徴が物語に深い影を投げかけています。(主人公のデイヴィッドは無垢であり明るい側面)
彼は策謀と偽善に満ち満ちた悪魔的なキャラクターで、彼の行動の動機は「自身の卑しい社会的地位を向上させること」にあります。その目的を達成するためには、力のある者(デイヴィッドなど)に対しては卑屈にふるまい、弱い者に対しては無慈悲であり、他人を利用して自身の地位を築くことをいとわない。
彼の恐ろしさは、人の弱さにつけこむところ。例えばウィックフィールド法律事務所では、経営の傾きに乗じて、アグニスの父の心に巧みに入り込み、共同経営者になります。実質的な事務所の経営を支配することになり、あらゆる陥穽や奸計をもちいて、一切の証券類や勘定書、共同事務所の帳簿を自らのものとし、ウィックフィールドにとってユライア・ヒープはなくてはならない存在となることで、徐々に彼の人間性を破壊していきます。最終的には、家財一切の担保書まで奪い完全な破産者へと。(それによって彼は)さらに娘のアグニスを自分のものにしようとします。
ウィックフィールド自身は、ユライア・ヒープを心では拒絶しながらも、彼に頼り切ることによって、彼を蝕んでいき、彼本来からかけ離れた存在となっていきます。(まるで魂を吸い取られたように)
共同経営者になるを“契約”と考えた場合、これはファウスト博士が呼び出した悪魔メフィストフェレスと契約したことにも似通っていると感じました。(まるで寄生虫のように、ウィックフィールド家に規制します)
ユライア・ヒープの秘書に成り果てたミコーバー氏だったが、やがてユライアが偽造帳簿、ウィックフィールド法律事務所の顧客から巨額の金を横領している暴露して、化けの皮がはがれる