映画『アルプススタンドのはしの方』のあらすじ結末【大人気の名作戯曲を映画化】

▼この記事はこんな内容が書かれています。
1.映画『アルプススタンドのはしの方』の詳細なあらすじ・ネタバレ結末
2.映画『アルプススタンドのはしの方』のキャスト紹介
ペンちゃん
こんにちは、シネコンスタッフ歴5年・年間100作以上映画をみている、ちょ〜映画好きのたかりょーです。

『アルプススタンドのはしの方』はハートフルな青春映画。

本作をみることで「奇跡は起きなくても、満足できる時間の中で生きているなら、それも悪くない」と感じられるようになります。

 

『アルプススタンドのはしの方』は兵庫県立東播磨高等学校演劇部の籔博晶(演劇部顧問)が考えた高校演劇の戯曲で、第63回全国高等学校演劇大会で文部科学大臣賞(最優秀賞)も受賞しています。

それだけ物語性がある作品なのでぜひ見てほしい作品です!

映画『アルプススタンドのはしの方』の簡単あらすじ!

夏の甲子園。東入間高校の応援団のうち、アルプススタンド(球場の内野席と外野席の間にある大観覧席)のはしの方に演劇部の安田あすはと田宮ひかる、元野球部員の藤野富士夫がいた。

野球のルールを殆ど知らなかった安田・田宮は試合もダラダラと適当に観戦していましたが、藤野に時々解説してもらったり、茶道部顧問なのに誰よりも熱く応援している英語の厚木先生に檄を飛ばされたりして少しずつ試合に興味を持ち始めます。

そこに宮下恵も現れます。常に学力テスト1位の宮下でしたが、先日、吹奏楽部部長の久住智香がその座を奪った事がちょっとした話題になっていました。

その上、宮下が野球部のエース 園田に秘かに心を寄せていると分かったり、演劇部の二人が念願の全国大会出場を部員のインフルエンザ感染で断念していた事のモヤモヤがここで噴出したリ、藤野が同年の園田にどうしても追い付く事が出来ないとコンプレックスを抱いた末に退部した事を告白したり、今まで誰にも明かさなかったそれぞれの胸の内が明かされてゆきます。

やがて、園田の頑張りにより、絶対不利と思われた試合の流れが変わり、「勝てるかもしれない・・・」という空気になります。

今まであきらめ、

「自分達が頑張ったところで、奇跡が起こる訳じゃない」

と冷静を装っていた4人は、何かに熱くなると言う経験をここで初めてする事になるのでした。

映画『アルプススタンドのはしの方』の登場人物

・安田あすは(演:小野莉奈)

東入間高校3年で演劇部員。自分で脚本を書いて大会出場を目指すほどに演劇に打ち込んでいたが、部員がインフルエンザに罹った為に出場を断念した。その悔しさから無気力になり「しょうがない」が口癖になっている。

自分に無いものを持っている久住智香に嫉妬し、彼女が園田と付き合っている事を周囲にバラした。

・藤野富士夫(演:平井亜門)

東入間高校3年で元野球部員。同級生で野球部のエース 園田との才能の差、同じく同級生で下手なのに練習し続ける矢野のひた向きさを目の当たりにし

「もっと他の大事な事に時間を使った方がいい」

と言い訳して野球部を辞めた。常に成績トップの宮下恵に密かに想いを寄せている。

・田宮ひかる(演:西本まりん)

東入間高校3年で演劇部員。空気を読むのが今一つ下手で、時々ちぐはぐな発言をする。

実はインフルエンザにかかって演劇部の大会出場を断念させた張本人。そのせいで必要以上にあすはに気を使っている。

・宮下恵(演:中村守里)

東入間高校3年。常に学力テストで学年1位だったが、夏休み前の学力テストでは入学以来初の2位になってしまった(その時の1位は久住智香)

園田に密かに恋心を抱いているらしく、自分から1位を奪った久住智香と園田が付き合っていると知って、体調を崩して動けなくなる程にその想いは強かった

・久住智香(演:黒木ひかり)

東入間高校3年。吹奏楽部の部長で宮下恵に学力試験で勝つほど成績も優秀。園田と付き合っている。多少無理をして常に周りに配慮している八方美人。

・厚木修平(演:目次立樹)

東入間高校英語教師。「一致団結」などの、皆で力を合わせるような行動や言葉が好き。授業中もペアを組んでの課題をよく行っている。喉から血が出るほどに野球部を応援しているが、茶道部の顧問。

映画『アルプススタンドのはしの方』の詳細あらすじ!

あらすじ・ネタバレ1【安田あすはと田宮ひかる】

「しょうがないよ」

顧問の教諭に肩を叩かれ、東入間高校の演劇部部長 安田あすはは唇を噛みます。後ろでは、部員が泣き崩れていました。

 

数か月後、夏の甲子園。

東入間高校は3年のエース 園田の活躍により甲子園一回戦に出場していました。

盛り上がりを見せる応援の生徒達から少し離れたアルプススタンドで安田あすはと、同じ演劇部の田宮ひかるは試合をぼんやり眺めていました。

いつの間にか3年の藤野富士夫も二人の後ろに座っていました。

そして、成績優秀で常に学年1位だった宮下恵も最後列に立っていました。

「ねぇ、今って何で走ったの?打った球、取られたよね?」

「うん、球を取られたらアウトのはずなのに、塁にいた人が次に走ったよね」

「見えないところで落としていたかな?」

「きっとそうだね・・・あ、でもアウト(のランプ)1つ増えてる」

野球のルールが殆ど分からないあすはとひかるは今一つ盛り上がる事が出来ません。

 

やがて5回裏の攻撃が終わりました。

すると、観客達が次々と席を立ち始めました。

「何で一斉に移動し始めたの?」

「もしかして、ファールボール除け?」

ついに堪らなくなった藤野が

「グラウンド整備だよ。5回裏の後、6回が始まるまえにやるんだ。みんな、その間にトイレに行ったり、飲み物を買ったりするの」

と口を挟みました。

そこへ、今年赴任してきた英語教師の厚木がやってきました。

人一倍熱くなっている厚木は、今一つ声の出ていない藤野やあすは達に檄を飛ばしに来たのです。

「いいか、人生は空振り三振の連続だ。でも、一番良くないのは怖がってバットを振らない事だ!」

よく分からないアドバイスをして、藤野を強引に「この一角の」応援団長に任命し、あすは達に声を出させるように命令してから何処かへ去って行きました。

特に藤野は厚木の授業を受けておらず、ただ言われるがままポカンとしているしかありませんでした。

「ところで、藤野君、今来たの?」

「・・・あぁ、来る前に補習があったから・・・」

突然のあすはの質問に、藤野はしどろもどろになっていました。

「私も補習受けたけど、普通に間に合ったよ?」

「・・・迷ったんだよ、来るとき。道じゃなくて、来るかどうか」

「何となく気持ちは分かるよ。私もサボろうかと思った」

それをきっかけにあすはの愚痴が始まりました。

何で応援に全員が強制参加させられるのか。

何で野球部だけがこんなに優遇されるのか

そもそも、野球部員はみんな偉そうだ。野球部員と言うだけで自動的に嫌い・・・

「あっ、でも藤野君って野球部じゃなかった?」

ひかるの一言で、あすはと藤野の間の雰囲気は一瞬で気まずくなってしまいました。

「違うよ。嫌いとか言って、本当は好きだよ」

「気を使わないで!俺、野球部は辞めてるし・・・そうだよな、偉そうだよな、野球部。例えば園田とか。ちょっとスカウトとか来てるからって」

「えっ、スカウトってスゴイよね。演劇なんか、スカウトなんて来ないし。全国大会に行ったって、こんな風に応援なんて来てくれないよ」

演劇部のあすはとひかるは、野球部と自分達の境遇の差に改めて気付き、嘆き始めていました。

「演劇も大会はあるの?」

「あるよ。関東大会もあるし、全国大会もあるよ。私らも関東大会に行ったんだよ」

何故か、ひかるはその会話を気まずそうに聞いていました。

そして、飲み物を買いに行こうとしたあすはを強引に引き留め、自分が代わりに買いに行ってしまいました。

あらすじ・ネタバレ2【思っていたほど熱くない3年の夏】

あすはと藤野は取り残された形になりました。

藤野もあすはも、朝に補習を受けていました。口には出さなくても勉強面でも大したことない事はお互いに察していました。

「何だね。こんなモンなのかね3年の夏って。もっと『青春!』って感じかと思ってた」

「演劇は青春じゃないの?関東大会まで行って」

「実は、大会に出てないんだ。部員がインフルエンザで熱を出しちゃって・・・まぁ、しょうがないよ」

試合は進んでゆきますが、相手校は春の大会にも出場するような強豪で、相手のエースはプロも注目しています。実力差は歴然で、東入間高校は攻守ともにパッとしない事があすはにも分かりました。

「これ、相手がだいぶ強いね」

「園田がいなかったらもっとボコボコだね。アイツすごいよ。前の大会でも9点しか失点してないし」

あすはは、藤野が園田の事にやけに詳しい事に気が付きました。

そんな時、応援団を鼓舞して回っていた厚木が再び戻ってきました。

「お前ら、応援なんて試合に関係ないって思ってないか?人生ってのは送りバントなんだ。塁には出れなくても、気持ちを込めてプレーする事が大事なんだ。応援だって一緒だよ。気持ちが選手たちに伝わっていいプレーにつながるんだよ。さぁ、腹から声出して応援しろ。ガンバレー!」

堪らず、あすはが言いました。

「先生、それって思い切り喉から出てます。早く止めないと喉を痛めますよ」

「・・・そんな馬鹿な事があるか!」

しかし、その直後に大声で応援していた厚木は咳込み、何処かへ行ってしまいました。

「厚木先生どうしたの?血、吐いてたよ」

「声出し過ぎだよ、野球部の顧問でもないのに」

「えっ、そうなの?」

「うん、茶道部の顧問」

入れ替わりでひかるが帰ってきました。

「お茶系」と言われてひかるが買ってきたのは、黒豆茶という微妙なチョイスでした。

「『お~い、お茶』とかを想像してたわ・・・」

と引きつった顔をしているあすはに気が付いて、ひかるは慌てて買い直しに行こうとしますが、あすはに

「大丈夫だから!」

と引き止められました。

 

やがて、話題は後ろに立っている宮下 恵の事になりました。

「しかし、宮下さんが来るとは意外だったね。1位じゃなくなるなんて初めてだからびっくりしたよ」

夏休み直前の模試で、常に学年1位だった宮下は初めて2位になっていたのです。

しかも、その時に1位だったのは吹奏楽部部長で、今現在もトランペットを吹いて応援している久住智香でした。

「宮下さんって、何か取っつき難いよね。先生とは妙に仲がいいクセに」

 

その頃、恵は自販機で「お~い、お茶」を買っていました。

そこへ喉を枯らした厚木が通りかかりました。

厚木は明るい口調で話しかけましたが、恵は迷惑そうに立ち尽くしていました。

「・・・すみません、気を使わせてしまって。私が一人だから・・・友達って、いないといけませんか?」

「いけなくはないが・・・分かった。お互い、本音で話そう。先生はみんなと一緒に応援して、ベースボールの醍醐味を味わってほしいんだ」

「それが先生の本音ですか?先生、本当は監督席から応援したかったんじゃないですか?」

そう言われて、厚木は動揺を隠せませんでした。

その時、休憩に入った吹奏楽部員が歩いてきました。その中に久住智香がいる事に気が付いた恵は、何も言わずにその場から立ち去りました。

 

グラウンドでは大きな盛り上がりもなく試合が続いていました。

「えっ、もうこっちの攻撃終わり?早くない?」

「まぁ、ヒットが出ないからね・・・」

元々あまり野球に興味がなかったあすは輪をかけて退屈しだし、外野の選手を指さして

「あの人達って必要なの?エラーした時しか注目されないって、最悪じゃない」

とまで言い出しました。

流石に業を煮やした藤野は、同級生の野球部員 矢野について語ろうとし出します。

「アイツ、下手なんだよ。バッティングフォームって、普通はこう(打上げるようなスイング)だろ?でも、矢野はこう(叩き付けるようなスイング)なんだよ」

とバットを振る真似をしますが、あすは達には思うように伝わりません。

 

その頃、めぐみがトイレから出てくると、前のベンチに智香と吹奏楽部員2人(進藤サチと理崎リン)が座っていました。

恵は知らないふりをして通り過ぎようとしましたが、サチとリンが目ざとく見つけて

「模試、残念だったね。1位じゃなくって」

と話しかけてきました。

智香はすぐに二人を制して謝りましたが、恵は

「知らなかった。順位なんて気にした事、なかったし」

とだけ言ってその場から立ち去りました。

リンとサチは明らかに無理をしている恵を笑っていましたが、智香は悲痛な顔をしていました。

 

試合は相手チームの2塁打に続き、エース 松永のホームランで2点追加され3-0となりました。

もはや東入間の応援団にもあきらめムードが漂い始め、あすははごみを捨てに行こうと立ち上がります。

すると、すかさずひかるも立ち上がり、迷惑顔のあすはに強引にくっ付いて行ってしまいました。

一人、応援席に取り残された藤野の所に恵が近づいてきました。

「藤野君、野球部だったんでしょう?教えて欲しい事があるんだけれど」

恵に話しかけられて「何でも聞いて」と嬉しそうにしていた藤野でしたが

「園田君って野球以外で何か好きな物あるの?」

と聞かれた途端に興ざめした顔になり

「よく聞かれるけど。多分ないと思う。野球の事しか頭にない奴だから」

とだけ答えました。

その答えにがっかりした様子で応援席を離れようとしていた恵でしたが、園田がバッターボックスに立つ際は彼の好きな曲「トレイン、トレイン」が演奏されると知り、また戻ってきました。

そして、ひかるがつい

「久住さん、張り切ってるね・・・あの二人って、付き合ってるんだよ」

とウッカリ喋ってしまった言葉を聞いて顔面蒼白になります。

「えっ、園田って野球だけじゃなかったのかよ・・・」

「いや、違うから!」

失言してしまったと気が付いたひかると動揺する藤野のやり取りと聞きながら、終始無言の恵でしたが、やがて貧血を起こして動けなくなってしまいます。

遅れてやって来たあすはは、訳が分からないまま藤野とひかるに運ばれてゆく恵を見送りました。

その姿を、少し離れた所から見ていたリンとサチは再び彼らをあざ笑っていました。

あすはもついてゆこうとしますが、ひかるは「いいよ、いいよ」と座っていさせようとします。

遂にあすはは胸の内に溜めていたものを吐き出しました。

「そういうの、もう止めない?仕方ないよ、インフルエンザだったんだし」

関東大会に出られなくなった原因を作った演劇部員はひかるで、それ以来必要以上に気を使っていたのです。

「厚木先生も言ってたじゃん。”人生は送りバントだ”って。塁には出られなくても、ランナーは次に進むんだよ。活躍できない時は、諦めて他の人の活躍を見てなさいって事だよ。切り替えてやってゆこうよ」

いつの間にか藤野がひかるの後ろに立っており、居心地の悪そうな顔をしていました。

それに気が付いたひかるは、慌ててその場から立ち去り、あすはと藤野が残りました。

暫く二人は無言でしたが、その場の微妙な空気に耐え兼ねたあすはが口を開きました。

「藤野君は何で野球を辞めたの?」

「同じ練習してても、園田ばっかり上手くなった。園田がいる限り、試合にはまず出られない。矢野は下手でも練習し続けて野球部に残ったけれど、俺は他の事に力を使った事が良いと思った。だから辞めたんだ。・・・俺、正しいよな」

「うん、正しいよ」

グランドでは、園田がまたヒットを打たれていました。

 

あらすじ・ネタバレ3【しんどいのは端っこだけじゃない】

自販機近くのベンチでは、恵とひかるが話をしていました。

「・・・・今日、来るんじゃなかったな。いい事ないし、園田君の応援も全然だし・・・」

「園田君?」

恵の気持ちに気付いていなかったひかるは、不思議そうな顔をしていました。

その時、

塩分も取った方がいいよ

と、スポーツドリンクが差し出されました。智香でした。

 

折しも、アルプススタンドのあすはと藤野も智香の事を話していました。

「久住さんってスゴイよね。吹奏楽部の部長で、成績も学年トップ」

「そのうえ、園田君とも付き合って・・・」

「あれ?知ってるの?」

「みんな知ってるよ。ひかるには『誰にも言っちゃだめだよ』って言ったけど、私が自分で言いふらしたから」

「最低だな・・・でも(それだけ揃っていると)ムカつくよな」

 

智香が差し出したスポーツドリンクを、恵は受け取ろうとせずに立ち去ろうとしました。

「待って、無視しないで!」

そう言われて、恵は智香の方を向き直りました。

「私一人が無視したって、久住さんは私の欲しいものを全部持ってるじゃない」

恵の言葉に、智香の表情が強張りました。

「私だって報われたいから、無理して頑張ってるの。真ん中は真ん中でしんどいんだよ」

そう言って智香は立ち去り、気まずそうにしていたひかるが恵に話しかけました。

「私もさ、実は園田君のこと、良いなって思ってたんだ。割と好きだよ」

「・・・割と?」

ひかるのフォローは何処か的外れで、恵の表情は暗いままでした。

 

試合が進んで8回になっても、東入間高校は得点できないままでした。

「まぁ、しょうがないよね。相手は強豪校だし」

あすはの言葉に恵が反応しました。

「しょうがないっていうの、止めようよ。頑張ってるのに、周りの人がそんな事を言ったら嫌な気持ちになるよ。それに安田さんに『しょうがない』なんて言って欲しくない人だっている筈だよ」

横でひかるがバツの悪そうな顔で俯いていました。

「私は言われたよ。メチャクチャ頑張ったのに『しょうがない』って。宮下さんは経験ないだろうけど」

その時、厚木が再びやって来ました。劣勢の今だからこそ、自分達のエールを野球部員達に届けようとして一段とヒートアップしていました。

しかし、あすはの忠告も聞かずに張り切り過ぎて、のどを痛めて声はガラガラになっていました。

それでも「がんばれー!!」と応援し続ける姿に居た堪れなくなって、あすはが立ち上がりました。

「もう無駄ですよ。グランドの入れない人間かいくら頑張ってもしょうがないですって!」

「そんなことねぇよ!」

ガラガラ声の厚木が、あすはの言葉に真っ向から反論しました。

「俺にできる事は少ない。でもしょうがないなんて言うな。声出せ!」

その時、ひかるが立ち上がり、グランドにむかって「頑張れー!」と叫び出しました。

その直後、バッターが打ちました。ボテボテのゴロで難なくアウトになると思いきや、イレギュラーバウンドで守備が取り損ねてヒットになりました。

「いいぞ、お前を応援団長に任命する!この反乱分子どもを一掃しろ」

厚木は満足げに吹奏楽部の方に向かいました。

 

あらすじ・ネタバレ4【しょうがない事なんてあるか!】

「どうしたの?大きな声出して」

あすはが怪訝そうな顔でひかるに尋ねました。

「・・・・先生、偉いよね。まだ3ヶ月くらいなのに私達が演劇部だって覚えてた」

「そう言えば、授業違うのに俺のこと覚えてた・・・」

藤野も賛同しました。

「まぁ、そんなもんじゃん。ヒットがでて良かったよ」

その時、場内放送で次のバッター 矢野がアナウンスされました。

「矢野…」

藤野は複雑な表情を浮かべていました。

バッターボックスに立つなり、矢野が行ったのは送りバントでした。

矢野自身はアウトになりましたが、走者は次の塁に進んでいました。

「可哀そうだよ。嬉しいのかな、打席に立つの・・・あんなバントでも」

あすはが呟きました。

「嬉しいよ。だってずっと練習してきたんだもの。打席に立てて、きっと嬉しいよ」

そう言った後、ひかるは振り返ってあすはに言いました。

「あすは、大会に出よう。全国大会に出られなくてもいい。あすはと同じ舞台に立ちたいの」

その時、ヒットがでて1点、犠牲フライで更に1点が東入間高校に入りました。

「4対2、次の回で逆転できるかも!」

ひかると恵は盛り上がっていましたが、あすはは

「また点を取られたら終わりジャン」

と、未だ冷静でした。しかし、ひかるは

「抑えるよ、園田君だったら絶対に」

と希望を捨てませんでした。

「宮下さん、一緒に応援しよう。声、出して」

と恵も励まし、声を出して「がんばれー!」と応援し続けました。

期待通り、園田は力投を続けますが、疲れが出てきたのか松永を相手にボールやファールや続きました。

「今の打球、もう少しでホームランだったよ。危なかった~怖いね」

「でも、園田君はもっと怖い筈だよ。相手はエースだし、大勢の人が見てるし・・・」

「そうか、考えた事もなかったけど、私達と同じ高3だもんね。どんな気持ちかな?怖いに決まってるよね」

「またボール・・・ストライクゾーンに投げるの怖いのかな?松永、歩かせる積りなのかな?」

「きっとそうだよ!次をアウトにすればいいんだし」

その時、藤野が立ち上がりました。

「園田、お前は何のために野球やってるんだよ!」

叫んだあと、今度はひかるに向かって言いました。

「園田がどんな気持ちかって?勝ちたいと思ってるに決まってるよ。あいつはそうゆう奴だよ」

藤野の声援に応えるように、園田は見事に松永を三振に討ち取りました。

とうとう、あすはも立ち上がって呟きました

「・・・ひかる、今年はちゃんと予防接種、打っておいてね」

「そうだね、受験生だしね」

「・・・まぁいいわ、後で説明する」

あすはは苦笑した後で「がんばれー!」と声を出し始めました。

 

「最後、音出していくよ」

智香も部員たちを鼓舞し始めましたが、最終回になり疲れ切ったサチやリンは

「もう十分にやったよ」

と乗ってこようとしません。いつもなら引き下がっていた智香でしたが、この時ばかりは違いました。

「もっと出して!出るでしょう!もっと、もっと!」

実は、智香は何度も園田にLINEでメッセージを送っていましたが、昨晩の

「試合に集中したいから」

という返信を最後に、今日になってからは智香がどれだけメッセージを送っても一切返事がなかったのです。

音を出す事だけが、智香が園田にエール送る唯一の方法でした。

智香の気迫に押され、サチやリンもついには重い腰を上げ

「みんな、思い切りね!」

と周りの後輩達にも指示を出して大音量で演奏を始めました。

気合のこもった演奏のおかげで、藤野やあすは達の応援も一層熱を帯び始めました。

しかし、東入間高校は追い込まれ、とうとう2アウトになりました

その時、吹奏楽部が「トレイン、トレイン」を演奏し始めました。

「4番、ピッチャー、園田君」

そのアナウンスが流れた途端、東入間の応援席が一気に色めき立ちました。

声援に勇気づけられたのか、園田は積極的に振ってゆきました。打球はホームラン性の大きな当りになるものの、惜しい所でファールになり、2ストライクと追い込まれてしまいました。

「園田君・・・」

座り込んだ恵にむかって、藤野が叫びました。

「声出せよ。トランペットに負けてるだろう。良いのかよ、トランペットに負けても!」

そう言われて恵は立ち上がり、再び大声で声援を送り始めました。

そして、またも園田は打ち、今度はヒットで1・2塁となりました。

「久住智香、ナイス演奏!」

恵の声に振り向いた智香は満面の笑みで

「逆転するよ~!」

と大声で返しました。

その勢いに押されたのか、次のバッターもヒットを打ち、4対3と1点を返しました。

逆転できるかも!」

皆が興奮する中、バッターボックスに立ったのは矢野でした。

東入間高校の全員が全力で応援する中、矢野の打球は大きな弧を描きました。

”逆転ホームラン!”

誰もが期待しましたが、惜しいところで打球は伸びず、キャッチされてアウトとなりました。

試合終了。東入間高校は甲子園1回戦突破とはなりませんでした。

「これで・・・終わり?」

誰からともなく拍手が始まり、やがて全員が拍手をし始め、野球部の健闘を称えました。

あすはも拍手をしながら

「私さぁ・・・来て良かった」

と呟いた後に

「あ~ぁ、悔しい~!」

と心から残念そうに言いました。

 

あらすじ・ネタバレ5【端っこはやっぱり落ち着く】

数年後、社会人となったあすは・恵・ひかるはナイター試合が行われる球場の観客席にいました。

「あすは、東入間で教員やってるんでしょう?」

(あすはは演劇部の顧問にもなっているようです)

「部活っていえばさぁ、東入間の茶道部。今度、全国大会に出るんだって。顧問は厚木先生。最初は茶道の事なんてなーんにも知らなかったのに・・・」

3人が話していると、突然スーツ姿の藤野が現れました。

暫く前に恵と藤野は偶然再会し、それ以来LINEをしたり、たまに飲みに行ったりしているそうです。

今日も、3人集まるという事で恵が誘ったのでした。

野球用品を作る会社に勤めている藤野は、仕事で訪れた名古屋で、大企業の社会人野球チームでピッチャーをしている園田にも再会していました。

「こいつ、幾ら貰ってるのかな~なんて考えてたら悔しくなってきたよ」

と言って他の3人に「相変わらずだね」と笑われていました。

その時、バッターボックスに矢野が登場しました。

野球部の顧問から

「練習量だけは誰にも負けなかった」

と言われ、大学に入っても練習を続けた矢野は、遂にプロ入りを果たし、今日がデビュー戦だったのです。

高校時代と変わらず積極的に振っていたものの、初球はファール。

しかし、それにもめげずに打った次の球も大きく飛び、4人共打球の行く先を目で追って夜空を見上げたのでした。

映画好き、たかりょーの個人的な感想を紹介!

夏、高校生の青春を描いた映画は小説は数多くあります。

しかし、本作でクローズアップされているのは、グラウンドでプレイする野球部員ではなく応援している「それ以外」の生徒達です。

彼等は応援席にいる多くの生徒のごく一部にすぎません。しかも、大声を張り上げて熱心に応援している生徒達から少し離れた、端の方に座っていて、今一つ熱の入っていない生徒達です。

彼らはまた、頑張っても報われなかった者達でもあります。

藤野がどれだけ一生懸命にやっても、才能ある同級生 園田は更に物凄い速さでどんどん先に行ってしまいます。誰がどう見ても下手なのに諦めることなく続ける矢野のような根性もなく、自分の才能に見切りをつけて野球部を辞めてしまいました。

 

あすはは、頑張って演劇の関東大会出場にこぎつけたにも拘らず、部員(ひかる)がインフルエンザに感染した為にフイになってしまいました。

そのせいで、心の中では上手く行っている周りの人間に嫉妬しながらも、終始冷めた様子で過ごすようになります。

恵は、これまで常に学力テストで1位だったにも関わらず、思いを寄せる園田も、学年1位の座も久住智香に取られてしまい、自分は何も持っていないと感じています。失望感に囚われ、藤野が自分の事を好きだという事にも気が付きません。

彼らは、実は何も持っていない訳ではないのですが、声援を浴びたり、応援で盛り上がる同級生の輪から距離を置いたりしながら観戦しています。時には、熱くなっている生徒をバカにするような事も言います。

かく言う入間高校野球部やエース園田も、地区予選を突破して甲子園に出場するのは凄い事なのに、甲子園常連の強豪校やプロ入り確実のモンスター選手 松永の前では所詮「端っこ」の存在です。

東入間高校に入って県立大合格は楽勝だと思っていたのに、補習を受け、模試の結果も県立大受験はE」定の藤野やあすはの姿と似ているようにも思えました。

 

物語の終盤

「園田君だって怖いよね。私達と同じ高校3年生だもんね」

と気付き、心の底から応援しだします。

確実にアウトと思われたボテボテのゴロがイレギュラーバウンドでヒットになった時をきっかけに、彼らは装っていた冷静さをかなぐり捨てて大声で応援を始めます。

汗だくで大声を張り上げる姿はカッコよくもないし、大声で応援をしたからと言っても勝敗は結局予想通りでした。

しかし、野球部が負けても彼らは満足げな顔をしていました。

そして彼らは社会人になり、自分にあった場所で懸命に頑張っていました。

平凡で目立たないけれど、マウンドで喝さいを浴びてプレイする人々を眺めて応援するような人生だけど、世の中の多くの人はそういう風に生きています。

 

そして、気付いていないだけで、いつの間にか自分は何かしらのマウンドでプレイしており、それをコッソリ応援してくれる人もいるかもしれないと思いました。

奇跡は起きなくても、満足できる時間の中で生きているなら、それも悪くないーー見終わった後にそう感じました。

最初は気だるく始まりましたが、終わりごろにはドキドキしながら盛り上がるばめんもあります。選手がプレイする姿は一切見えません。それにも関わらず出演者の演技によって、見ているこちら側も作品に入り込んでしまい、思わず手に汗握りってしまいました。

作品の展開と同様、いつの間にか目の前の展開に魅了されてしまう。そんな見応えある作品でした。

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