『コンビニ人間』のあらすじ・感想まとめ【テーマは普通って?】

  • コンビニ人間のあらすじを知りたい!
  • すでに読んだ人の感想を知りたい!

今回はこのような要望に答えます。

先日僕はこのようなツイートをしました。

コンビニ人間を再読したので、感想とあらすじをまとめますね。

目次

コンビニ人間のあらすじ

コンビニバイト歴18年の古倉恵子。36歳にして彼氏もいなければ、性経験もない、独り身の女。

その彼女が愛する唯一のものは、”コンビニ”。彼女とコンビニの出会いは大学1年生の頃。オープニングスタッフ募集の貼り紙を見つけたのだ。

週5日でスマイルマート日色駅前店に通い、大学卒業後、18年間執拗に同じ店で働き続ける。

品出し、検品、レジ打ち、仕込み、商品の声かけ、迷惑なお客さんへのトラブル対応等。

いつもコンビニ食を頬張り、1日はコンビニのためにあり!
睡眠もコンビニのために身体を整えるために必要であり、夢の中でも清潔なコンビニの風景の中でレジ打ちをしている。

コンビニでの働くことは熟知しており、全てが身体に染み込んでいる。

表情はニッコリと、大きな声で「いらっしゃいませ!」「かしこまりました」「ありがとうございます」の掛け声。

そこにある日、白羽という男がアルバイト店員として働くことに。

そしてひょんなことから、「僕を世界から隠してほしい」と取引をし、恵子の家に居候することになり、恵子はペットとして飼いならすことに

コンビニ人間のテーマは?

コンビニ人間のテーマはズバリ、

  • 「普通という価値観」の捉え直し
  • 「普通」をを超えた先にある「異常性」

にあります。

僕たちの世界って結婚やら就職やら何かと「普通」という価値観で図られることが多いですよね。

  • 30歳までには結婚しようね
  • 大学卒業したら就活しようね

それらは暗黙のルールになっています。そして「普通」に振る舞える人は、周りからは「常識人」とみなされて、「正常的な人」であると仲間にしてもらえる。

逆に普通に振る舞えない人は社会的には「異常」であるとされて社会不適合者という烙印が押されることになります。その結果仲間外れにされ、ひどい時には社会性がないと「パーソナリティ障害」など病人扱いされることも・・・

でもそれって果たして誰が作り出したのでしょうか。

てかそもそも「普通」であることってなんなのでしょうか?

作家の村上さんは、古倉という女性の習性や行動を通じて、日本社会に深く根付いている「普通」という価値観とそれに反する異常性。

この両極の関係をしっかりと描いています。

※テーマを聞いて重そうに思う人へ
小説はとてもコミカルに軽快で、笑いどころ満載です。
逆に古倉の悲しさを通じて漂う哀愁という部分もよみどころです。

コンビニ人間の意味とは?

「やっぱり!私はコンビニ人間!!」

古倉は「普通」であることを望むのですが、どこまでいっても変なやつです。

ただ彼女が世界で唯一「普通」になれるのが「コンビニ」という場所。

「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる。

バイト店員という仮面を被れば、はじめて社会に参加できる存在となり、やっとみんなの仲間入りができるのです。

でもいざコンビニという聖域を飛び出すと、「普通」という性質が剥ぎ取られて、「異常」性を纏うことになります。

つまり古倉という女性は、“古倉”単体では、人間になりきれない悲しき存在。コンビニという要素が付加されて、はじめて社会性を有した「普通」の存在になれる=コンビニ人間という「異常」な存在なのです。

古倉って本当に「気持ち悪い存在」なの?

コンビニ人間を読んで「古倉を気持ち悪い存在」とする感想があります。

たしかに、古倉は気持ち悪いと思われる存在かもしれません。

例えば古倉の子供時代。公園に死んだ小鳥に対して、「これ今日の夕飯にしよう」と発言。周りの普通の感覚を持った子供たちは泣いているのに。

また楽しい、悲しい、寂しいといった感情がほとんどなくて、まるで機械みたいな子です。

でもここで考えたいのはなぜ「気持ち悪い」のかということ。

それも多分、「Aの場合はBをする」という常識サイドによる、勝手な格付けですよね。

「みんなこういう行動とるはずなのに、あんな変な行動をとるなんてね。気持ち悪いね」

つまり「気持ち悪い」という感想を述べる人は、村上さんが描く「普通」という価値観の側にいる人たちであるのです。

コンビニ人間の個人的感想

それではコンビニ人間を読んだ、僕個人の感想を書いていきますね。

・普通ってなんだっけ?と問いかけられる小説

・古倉恵子の変わり者ぶり←面白さのなかに悲しみが漂う

・白羽という男がより小説を面白くしている

それぞれ詳しく解説していきますね。

感想01.普通ってなんだっけ?と問いかけられる小説

コンビニ人間を読むと必ずぶつかる疑問が「普通」や「平凡」ってなに?と言う問いです。

普通であるためには“正常”で“きちんと”していなければなりません。

そうでないと、、、

正常な世界はとても強引だから、異物は静かに削除される。まっとうでない人間は処理されていく

じゃあ普通って何ですか?って話ですが、例えば、大学を卒業したら、どこかの会社に就職する。

そして誰かと恋をし、SEXをし、人生の伴侶を見つけて結婚すること。そして子供をうむ。

就職・結婚・出産というムラのルールから外れている人間なので共感できる部分があった。

もし結婚もせずに一人でいきていたら「どうして結婚しないの?」と周りから言われます。

でも子供の頃から、「変わっている」と烙印を押され続ける主人公は、つねに正常と呼ばれる人々(親、妹、先生、コンビニのアルバイト店員等)から裁かれる運命になります。

普通の人間っていうのはな、普通じゃない人間を裁判するのが趣味なんですよ。

36歳で未婚の独身女。就職もせずコンビニのアルバイトをずっと続けている。

古倉恵子は世間の価値基準から漏れた、いわば、異常者です。

なので、彼女の言動や思考は、一般社会に生きる僕たちにはなかなか理解しにくいかも知れません。

ただ、昨今、多様性やマイノリティーの問題が出ているなかで、「普通or異常とはなにか?」を考えさせられる小説です。

感想02.古倉恵子の変わり者ぶり←面白さのなかに悲しみが漂う

主人公の古倉恵子は一言でいうと、相当変わっています。

喋り方は堅苦しく、話す内容はロジックが通っているようにみえて、発言はむちゃくちゃ。

例えば、子供をつくるという考え方。

私たちって動物だから、増えたほうがいいじゃないですか。私と白羽さんも交尾をどんどんして、人類を繁栄させるのに協力したほうがいいと思いますか?

「たしかに・・・」と思いながらも、もしこんな人がそばにいたら、ちょっとな〜って感じですよね。

でも時々、彼女が心の中でつぶやく言葉たちに、ドキッとさせられます。

差別する人には私から見ると2種類あって、差別への衝動を内部に持っている人と、どこかで聞いたことを受け売りして、何も考えずに差別語を連発しているだけ人だ。

正常な世界はとても強引だから、異物は静かに排除される。まっとうでない人間は処理されていく

古倉恵子は歳を取ってから変わり者になったわけでなく、それこそ、小さいの頃から、“異常”な片鱗をみせています。

例えば、公園で青い綺麗な小鳥を死んでいるのも見つけたとき。

「持って帰ってこれ食べよう、お父さん焼き鳥好きだし、私と妹は唐揚げ好きだし」と言いいます。

また、教室で先生が泣きわめいていたら、黙ってもらおうと走り寄って、先生のスカートとパンツを勢いよく下ろすこともします。

このように作者の村田さんは、主人公を徹底的に変人として描き、世間から見たらまるで“宇宙人・不気味な生き物”のような存在として登場させています。

だからこそ、彼女が動いたら発言したりすると喜劇のような滑稽さが生まれるわけです。

とはいえ、こう問いかけてもいいわけです。

「じゃあ、彼女って本当に変なの?世間の基準から、ズレれているかもしれないけど、じゃあ世間ってなんなの?」

と考えると、生まれた世界を間違えて生きづらさに喘いでいる主人公としても捉えることができます。

このように面白さと悲しさの両面をもったのが、古倉恵子なのです。

感想03.白羽という男がより小説を面白くしている

コンビニ人間では主人公の恵子ともう一人、世間から除け者扱いされている白羽という男が登場します。

彼は、コンビニにアルバイト店員としてやってきます。

ひょろ長くて背だけは高い。

針金みたいにガリガリで、顔に絡みついたようなメガネをかけている。

35才の独身男。

なぜコンビニにきたかと言うと、「婚活」という驚きの回答。

そして、彼は言葉や態度だけがでかい。でも仕事はサボるわ、遅刻するわ、廃棄をこっそり盗み食いするわ、常連のお客をストーカーするわと問題児。

自分がコンビニで働いているのにも関わらず、心底、コンビニで働く人々を差別しています。

この店ってほんと底辺のやつらばっかですよね、コンビニなんてどこもそうですけど、旦那の収入じゃやっていけない夫婦に、大した将来設計もないフリーター、大学生も、家庭教師みたいな割のいいバイトができない底辺大学生ばっかりだし、あとは出稼ぎの外人、ほんと、底辺ばっかりだ

白羽は典型的な駄目男です。

世間的をバカにしているくせに、世間的な価値観で物事で判断し、行動し、発言する。

そして、ときに精神異常をきたしているんじゃないか?と疑いたくなるような発言も出てきます。

この世界は、縄文時代と変わっていないんですよ。ムラのためにならない人間は削除されていく。狩りをしない男に、子供を産まない女。現代社会だ、個人主義だといいながら、ムラに所属しない人間は、干渉され、無理強いされ、最終的にはムラから追放されるんだ

挙句の果てには

僕に言わせれば機能不全世界なんだ。世界が不完全なせいで、僕は不当な扱いを受けている

と泣き出して、自分が活躍できないのは世界が悪いと八つ当たりします。

真っ向から世界と戦うことせず、逃げたい・隠れたいと子供のようにごねますが、いい女と結婚する、僕にはビジョンがあり、ネット起業をするという夢だけはでかいのが白羽なんです。

ツイッターより集めた感想をご紹介!

それでは続いてツイッターで集めた感想を紹介しますね。

01.村田沙耶香さんは日常の中に異常を紛らせる天才

02.やっぱり考えさせられる、「普通とは?」

それぞれ説明していきますね。

01.村田沙耶香さんは日常の中に異常を紛らせる天才


ぼくは村田沙耶香さんの世界観がとても好きなんです。

なぜなら、日常生活の中に、ふとした異常を紛らわせる天才だと思っています。

普段なら、何も考えずただ利用するだけのコンビニ。

そこに、世間の価値基準から外れた主人公をコンビニ店員として登場させる。

すると、世界に“ズレ”が生まれて、僕たちが経験できない、いろんな側面が生まれ始めます。

02.やっぱり考えさせられる、「普通とは?」

先ほど、僕の感想のところでもご紹介しましたが、やはり、コンビニ人間を読了した大半の方が、“普通”ってなにか?という疑問をもつようです。

普通って、社会が作り出したもので、その社会は、人間が作り出したものですよね。

人間が社会の価値基準を生むはずなのに、ある一部の人たちは、その価値に縛られて苦しむ状況に陥っているわけです。

コンビニ人間の主人公も、普通という役を演じ、黙るという選択肢を多くの場面で取っています。

なぜなら、世界は、変人や異常者を粛清するような精密機械・マシーンでもあるわけなので、白羽のようにどれだけ文句を言おうと、自分が生きやすい世界に変えることができないからです。

つまり、『諦めのなかで生きているのが古倉恵子だ』とも解釈できます。

そう考えると、とても悲しいシビアな内容としてコンビニ人間を読むこともできるわけです。

まとめ

コンビニ人間はこれで2回読みましたが、1回目と同じくらい面白く読書ができました。

多分、この小説で突きつけられていることは、かなり普遍なことで、誰もが一度は考えたことだから、自然と共感してしまう結果かもしれません。

皆さんもお時間があれば、一度だけでも読んでみてください。

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この記事を書いた人

読書好きブロガー。とくに夏目漱石が大好き!休日に関連本を読んだりしてふかよみを続けてます。
当ブログでは“ワタクシ的生を充実させる”という目的達成のために、書くを生活の中心に据え(=書くのライフスタイル化)、アウトプットを通じた学びと知識の定着化を目指しています。テーマは読書や映画、小説の書き方、サウナ、アロマです。

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