小説『サラバ』の感想とあらすじをまとめました【西加奈子の直木賞受賞作】

たかりょー
こんにちは、年間100冊以上の小説を読むたかりょーです。

本記事では、以下の読者さんに向けた記事をご用意しています。

 

さて今回取り上げる小説は、西加奈子さんファンなら誰もが知っている傑作『サラバ』です。

本作品は第152回直木賞を受賞し、2015年本屋大賞第2位にも選ばれました。

 

西さんといえば、家族や恋人など、人間同士の繋がり・関係性をコミカルに、愛や共感をもって描きます。

また最後まで読者を飽きさせず、グイグイ物語世界に引っ張っていく、いわゆるストーリーテラー。(日本の小説家のなかで、右に出るものがいないほどの・・・と僕は言いたい!)

結論、今回も夢中で読みました。時間を忘れるくらいに。。。

そして今回のサラバを読んで思ったのが、主人公歩の半生を丁寧に描きとっていく感じがまじでジョン・アーヴィングに似てました!

なので、めちゃくちゃ楽しみながら読んで、上下巻で750ページほどあるんですが、4日間で読みきれましたよ。

今回はそんなサラバのあらすじや感想などをまとめていきますね。

小説『サラバ』はこんなあらすじです

僕はこの世界に左足から登場した―。

主人公の歩は、父の海外赴任先であるイランのテヘランの病院で生まれた。

歩の家族圷(あくつ)家は、破天荒な姉や、幸せを願う母、朴訥な父親がいる。

ドタバタな毎日をテヘランで過ごしますが、やがてイラン革命がおき、日本へ帰国。

 

大阪で暮らすことになった圷家。もって生まれた性格で、歩は大阪の幼稚園や小学校ではすぐに周囲に溶け込む。

が、はというと、破天荒な性格が裏目にでて「ご神木」というあだ名をつけられ、周囲から孤立していく。

 

そんな折り、父は新たな赴任先が決まる。

場所はエジプトだ。

歩は日本人学校に通うことなり、運命的な出会いヤコブというエジプト人の少年と出会う。

しかしながら、ある日突然、両親が離婚することを歩は告げられる。そして帰国。

家族に振り回されながら主人公歩は成長していく。

サラバはこんな人におすすめ

・小説をとにかく楽しく読みたい人

・主人公の半生を丁寧に描きとった小説が読みたい人

・人生で信じるものがなく、自分に芯がないなと思っている人

・西加奈子さんの良さがわかる小説が読みたい人

小説『サラバ』の感想・考察!

飽きさせない!読ませる!ストーリーの面白さ

サラバは分量としては相当あるのですが、長いな〜と感じることなく、一気に読むことができました。

これはひとえに、西さんのストーリー運びが天才的に上手いからだと思います。

つまり読者を最初から最後まで飽きさせない工夫が施されているということです。

数ページに一回はなにかしら興味をそそられる事件やエピソード出てきて、それは急な感じでなく変にリアルで、さらに言えば、西さん独特のセンスで、エピソードや事件が笑えてしまう。

変に「あ〜わかるわ」というような共感ができるんですよ。

例えば、

当時、組みの中で、クレヨンを交換する、ということが流行っていた。自分の好きな色を集めるため、色をトレードするのだ。例えば黄色が好きな子がは黄色を集めるために、オレンジを渡して、黄色をもらう、という風に。だが黄色おオレンジも主流ではなかった。それは「本当に黄色とオレンジが好きな子」がする行為だった。クレヨン交換が真に意味するものは、他にあったのだ。

人気帳票である。

女の子に一番人気の色がピンクで、男の子に一番人気の色が青だった。すなわち、ピンク色を一番集められている女の子が一番人気で、青色を一番集められている男の子が一番人気、というわけである。

幼稚園の人気投票をクレヨンで表現する点が面白かったです。

この他、アンネフランクやご神木など姉貴子周り、また八田のおばちゃんのアパートで結成された怪しい団体サトラコヲンモン様のエピソードも大変面白いです。

そして時に、事件が後々の物語に大きく関わってくる(=伏線)になっていて、あれよあれよと小説のページをめくるスピードがあがってくるんですね。

これこそ日本のストーリーテラーと呼ばれる所以でしょう。

「出会う」ことの大切さをあらためて気づかされる【登場人物の描き方】

サラバほど『キャラクターたちが出会う』

これこそ小説を大きく動す原動力になる、と勉強させられる小説はありません。

西さんもWeb記事でのインタビューでも語られていますが、

登場人物に引っ張られるところがあって、めちゃくちゃ幸せになる瞬間がありました。

というふうに、歩という主人公の成長を描く小説では、登場人物たちとの出会い、葛藤し、別れが不可欠なんです。

 

サラバでは実に多くのキャラクターたちが登場します。

鴻江やヤコブ、矢田のおばちゃん、向井さん。

また幼稚園時代の爬虫類顔の女子や、中学時代のの友達や、学生時代のアルバイト先の店主のようにほんの数シーンでしか登場しないようなキャラクター。

主人公の歩は、小説のなかで彼らと出会い、そして交流し、良くも悪くも確実に一歩一歩ずつ成長しているんです。

家族とは?を考えさせられる

サラバは『家族』や『血縁』についても深く考えさせられます。

圷家には実に個性的な家族がいます。

私をみてと自己顕示欲の塊の破天荒な姉、幸せになってやると子供よりも自分の幸せを願う母親奈緒子、仏教僧のような父の家族。

また好美おばさんや、その息子義一・文也、ひとり身の夏枝おばさんいった親戚たち。

 

西さんはその家族・親戚の描き方がとても丁寧で、それぞれ個性があり、少なからずインパクトをもっているんです。

また愛をもっている視線というのは西加奈子さんならではの特徴でしょう。

 

人の性格は家庭環境によって左右されると言いますが、歩という人格形成では明らかに家族・親類からの影響は大です。

逃れられない感覚と産まれ落とされた感覚

サラバという小説は、コミカルな印象の裏に、なかなか根深いテーマが隠れています。

・人間は産まれた時点で親や国などを選ぶことができない

・国家間で抱く差別的意識

・望んでもないのに親が勝手に産み落とした

など。

例えば、歩がこの世界に登場=生まれる瞬間が書かれた冒頭の文などは、上記のテーマをしっかりと踏まえた上で書かれているように思えます。

自分にはこの世界しかない、ここで生きてゆくしかないのだから、という諦念は、生まれ落ちた瞬間の、「もう生まれてしまった」という事実と、穏やかに、でも確実に繋がっているように思う。

またエジブシャンへ抱く差別的感情の時にも、歩自身「裕福」であることに恥ずかしさを覚えるシーンもそうです。

自分も一歩間違えればそのような境遇になる可能性だった。にも関わらず「偶然」圷(今橋家)に生まれて、ある程度裕福な側にいる。

サラバを読んでいると、メインテーマ以外にも実に多くのサブテーマが動いています。

自分の軸を持つことの大切さ=信じるものが必要

主人公歩はとことん『自分の軸』をもっていない男として描かれています。
つねにその場の流れに身を任せて、何か面倒に巻き込まれそうになったら、事を荒げないために黙認したり、見知らぬふりをしたり。
つまり、自分の意見を表明するのをとことん避けています。
自分は周りと同調しているんだよと、『無難な人間』であると見られようと努力しているんですね。
しかしながら歩のように他人からみられた自分がどう映るのかばかり気にしていると、他人の評価が絶対となってくるので自ずと自分の軸がなくなります。
つまりちょっと哲学的にいうならば、歩は歩自身を見つめているのではなく、他人の鏡に映る歩自身をみているだけなんですよ。
数々の奇行を繰り返し
小説には「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ」という名言があります。
これをいうのは姉の貴子です。

姉の貴子は小説ではとことん変な姉として描かれます。

圷家では唯一容姿がイマイチであり、数々の奇行を繰り返し、乱暴で、自分の存在価値をアピールすることに余念がありませんでした。

 

しかしながら、小説の後半、その破天荒の姉が「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ」という。

そして

確かに私は、色々なものを信じた。そして傷つき、打ちのめされてきた。でもね、歩。私は少なくとも信じようとしたのよ。あなたとは違う。何かを信じようとしてこなかった。

私が、私を連れてきたのよ。今まで私が信じてきたものは、私がいたから信じたの。

つまり、姉は葛藤を繰り返しながら、「自分が信じられるもの」を探すのに苦闘していたのです。

人間の存在は根本的には弱いをもっていると考えています。

例えば、もし誰からいじめられたらどうでしょう。

人間の存在はそんなに確固としたものではないので、いじめという外的な攻撃を受ければ、簡単に自分という存在・地盤は緩みます。

この原因は自分とはなにかを根本的に決める、いわゆる”芯”となるものをまだ発見できていないからです。

だからこそ、信じるものが必要なのです。

そしてその信じるものは他人の誰かに決めさせるのではなく、自分自身で見つけていかねばならないのです。

まとめ

サラバは実に多くのことが学べる最高の小説です。

分量が長くてもその物語の面白さで時間も忘れて、のめり込むように楽しく読んでいけます。

西加奈子さんの良さが存分に味わえる。

それこそサラバの魅力です。

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