・あおいってどんなストーリーなの?
・ストーリーの簡単なあらすじだけでも教えて欲しい!
・あおいを読んだ人たちの感想を知りたい
今回はこんな皆様のご要望に答えるべき記事をご用意しております。
先日、僕はこんなツイートをしました。
#読了#西加奈子 さんの #あおい 読了😌
一体何度読むんだ!ってくらい、あおいを読みまくってますwwもう好きすぎて、さっちゃんに会いたい
こんな強くて頼もしくてわがままで素敵な主人公はいませんよ☺️西加奈子さんはほんとに素晴らしい作家さんです😌#読書記録 #読書好きな人と繋がりたい pic.twitter.com/Kt7xAjajni
— たかりょー|読書大好き・映画大好き (@RyoooooTaka) January 30, 2020
西加奈子さんのファンを公言している僕が、あおいの魅力について語っていきますね。
あおいは西加奈子さんのデビュー作!
あおいは「さらば」や「きいろいゾウ」、「さくら」で有名な西加奈子さんのデビュー作です。
西加奈子ファンから言わせてもらえば、すでにあおいはもうめっ〜ちゃくちゃ西加奈子節が炸裂しております。
デビュー作ならではの、文章のピュアさもあって、どれだけいろんな作品を読んでも、あおいの魅力は色褪せません。
あおいはこんな人におすすめ
・西加奈子さんビギナー
・大地にしっかりと足を踏みしめ強く生きる女性の姿を見せて欲しい
・女性心がわかりたい男性諸君
・どんでもないパワフルな言葉を堪能したい!
・面白い・独特な比喩に出会いたい
あおいの主要キャラクター
- あたし(さっちゃん)→27歳でスナックでアルバイト。以前は小さな配給会社でアルバイトをにしていた。そこで知り合った雪ちゃんにカザマ君を紹介してもらい、付き合うことに。四か月友達の
- カザマ君→あたしの3歳年下で24歳のダメ男。一浪して大学に入り、現在2回留年している。ふわふわとしてのらりくらりしている。映画館でアルバイトをしており、雪ちゃんに誘われた食事会で、さっちゃんと出会いそのまま一緒に暮らすことに。掴みどころのない性格。
- 雪ちゃん→あたしより2つ上。映画配給会社で以前、さっちゃんと一緒に働いていた。ザ日本美人って感じの一重のすうっとした目元をもつ素敵な女の子。バリバリ仕事をこなすし、性格もちょーいい。でも友達であるさっちゃんに、好きなカザマ君を横取りされる。
- ママ→さっちゃんが働いているスナックのまま
- みいちゃん→本屋さんで働いている女の子。尋常じゃない太い体型をしていて、変わったTシャツに着ている。作家志望でたくさんの辞書を読み「あらゆる言葉」の意味を覚える。小さい頃、誘拐されたかかった経験がある。
- 森さん→三十すぎのおじさん。銀縁めがねをかけている。さっちゃんの仕事先のスナックに通う。
あおいのあらすじを簡単にまとめたよ
27歳のスナック店員主人公あたしは、ふわふわと何を考えているのか分からない年下彼氏カザマ君と現在同棲中。
カザマ君は典型的なTheダメ男で、さっちゃんの好きって気持ちも全然伝わらないわ、悪気なく知らない女の子とケータイで連絡するわ、お腹に「俺の国」と名付けた変な地図を書くわ…もう全く女心が分からない男の子。
でもあたしはそんなカザマ君を嫌いになれず、むしろすごっ〜く好き。
そしてある日、妊娠検査薬が陽性反応。あたしのお腹にはカザマ君の子供がいる!その事実をカザマ君には打ち上げず、あたしは飛び出すように一人長野へ。
ペンションに泊まり込みの仕事を始めようと考えていたが、バイト初日に脱走。
足に血豆を作るながらも山道を歩くが、力が尽き果てた彼女は真夜中の道路に一人倒れこむ。
そこで待っていたものは、見るも美しい素敵な光景。それは一体何なんなのか。
あおいについて個人的な感想をつらつら
それではあおいの個人的な感想を3つでご紹介しますね。
冒頭の出だしが神!
リアルな女子の心模様
ど直球で刺さる表現!ツボをつく言語感
それぞれ解説していきます。
感想01.冒頭の出だしが神!
西加奈子さんの作品で共通していえるのは、小説の出だしの文がどれも神がかっている点ですね。
一番有名なのは、サラバは「僕はこの世界に、左足から登場した」でしょうか。
でもあおいも負けていません。以下をどうぞ。
あなたに、話したいことがあります。
それはあなたが僕たちに出会う場所の、とほうもない思い出や、柔らかな日常や、遠い未来のこと。たくさんたくさん、そう、どこかの王様の辞書みたいに、あまりにたくさんありすぎて、何から話そうか、少しこまってしまうほど。
でもあなたが、呆れるほどぎゅうっと目をつぶってくれるから、ああ僕は安心して、話すことが出来そうです。
どうでしょうか?すでに西加奈子ワールドじゃないですか?
その後、詩的とも、児童文学的ともいえるような文章が続きます。
そこは、風がたくさん吹きます。へびみたいににょろにょろと長いのや、キツネみたいにせわしないのや、アフリカゾウみたいにやさしいの、それはすれ違いざまに、こんにちは!挨拶をして、また旅をするのです。
・・・
そこには、雨がたくさん降ります。鉛筆みたいに細いのや、小石みタイにまん丸のや、鉄砲玉みたいに乱暴なの、それは地面を濡らして、お花と恋をしたりして、自由気ままに、また空に帰っていくのです。
ほんとうは全てご紹介したいのです!でも長くなるので、ぜひ本作を読んでいただくとして、すご〜く西加奈子さん全開の文ですよね。
補足
僕個人的に、この出だしはトニモリスン(とくに『青い目が欲しい』)の影響が濃いと踏んでいます。
というか、西さん自身もトニモリスンが大好きだし、“残酷な世界に果敢に立ち向かう主人公像”という一貫したテーマも、影響を受けていることは間違いないです。
感想02.リアルな女子の心模様
さっちゃんは直接的に表現しませんが、恋人であるカザマ君のことが大好き。
でもカザマ君はふわふわとした性格で、何を考えているか分かりません。
だから、同棲していても、さっちゃんの心は不安でざわめいています。
例えば、知らない女の子とカザマ君がケータイでやりとりしているのを見つけ、「もしかして(カザマ君が)私に飽きたのかも・・・」と憂鬱に。
結果、精神不安定となり、トイレに閉じこもって、嘔吐、、、というシーンがあります。
これってなんかものすごいリアルな女性の反応ですよね。
このように女性の気持ちをダイレクトに伝える表現が作品にはたくさん出てきます。
表現03.ど直球で刺さる表現!ツボをつく言語感
あおいには、僕たちの心を捉えて離さない表現がたくさん出てきます。
例えば、
そうあたしは馬鹿なんだ。いつも人の顔色をうかがって、心の動きにとても敏感で、ちっちゃいネズミくらい臆病なくせして、時々、一瞬の感情の波に、全てを任せきってしまうことがある。窮鼠猫を嚙む、違う。めんどくさい、というのとも違う。ただ流れに捨て鉢に身を任せるのではなく、なんてゆうか、一度起こった感情の波を、より大きな波へ変化させるのだ。なぜそうしたいと思ったのか、そのきっかけを忘れてしまうくらいに、恐ろしいほど速くて、大きく渦を巻いた波。
人の心はとても複雑なものですが、西さんは学者さんのように難しい言葉を使って、説明しようとしません。
その代わりに、上記のように「人の心って複雑→じゃあ、キャラクターが感じたり・思ったりしたことを、率直な言葉としてそのままぶつけよう」と、なんの衒いもなく、ど直球な文を書かれます。
以下の言葉なんかは率直すぎて、ひやっとする方も多いのではないでしょうか。
あたしなんて、次から次へと恋人を作る。決してもてるわけじゃない。自分に自信がないから、誰かの肩に触れること、誰かの体温を確認して初めて、ああ、あたしはここにいるんだ、と思うのだ。
それは依存以外の何ものでもなくて、初めのうちこそ、さあ、恋が始まったのだと、幸福に目をつむったりするけど、ある日ふと目を開けると、消え入りそうなちっぽけな自分に気づいて、どうしようもなく涙を流すことになる。恋が終わったからだと、必死で自分に言い聞かすのだけど、実はそれは、自分の卑小さを知らされた、ただ悔し涙だったりする。だからあたしの恋は、長続きしない。
どうでしょうか?主人公のさっちゃんの心をリアルに・ダイレクトに表現しています。
これは大前提として、西さんの言語感覚が鋭いから成り立ちます。
でもそれ以上に、キャラクターを1つの創作物(フィクション)に貶めるのではなく、まるで生きているかのように、彼女/彼と素直に向き合っているからこそ、編み出される表現なんです。
そして時には、子供のような視点で、世界を見たままで言葉にします。
だってあたしより、あの駐禁車のほうが、よっぽど寂しい。体は長年のほこりでくすんでいるし、目は光を失って、どんよりと濁っている。かつてはご主人様を乗せて颯爽と街を走っていたのだろう。
ストレートな表現。鮮やかな世界観。喜怒哀楽の感情。読み応えのあるストーリ。
今の”西加奈子の原型”となったのが、あおいであることは間違いありません。
その他の読者さんの感想
最後にツイッターで見つけたあおいを読了したユーザーさんの声をご紹介しましょう。
01.あおいに出てくる登場人物は魅力
02,あおい=ストレート&鮮やか
それぞれ解説していきますね。
感想01.あおいの登場人物は魅力的
『あおい』
西加奈子歳下のダメ学生カザマ君と同棲しているさっちゃん。妊娠を機に家を飛び出す。登場人物達は少し変わっていて痛いけれど可愛い。感じたことを感じたままにストレートに描く。表現の仕方に生命力を感じるというか、力が漲ってくるようなものがある。デビューから変わらない魅力。 pic.twitter.com/VkJz7BBGjy
— ひかる (@_hikaru_xoxo) May 16, 2019
僕があおいを何度も読みたくなる理由は、登場人物それぞれに個性があって、「このキャラクターってどんな人物だったっけ?」や「彼らって何をいってたけ?」とついつい思い出したくなるからです。
実は初読の時はそんなことなかったんです。
でも再読を繰り返すうちに、徐々にそれぞれのキャラクターたちが不器用でありながら愛おしいと思える部分がたくさん増えてたんです。
感想02.あおい=ストレート&鮮やか
【あおい 西加奈子】
ストレートで鮮やかな西加奈子さんの作品が大好きです!
デビュー作は初めて読みました😌処女作は書いた人そのものが表れるそうですが、まさに!って感じです😊
*どうせ怖いんだ、だったら、見えるもの聞こえるもの感じるもの、すべて自分のものにするのだ。* pic.twitter.com/MpS2QQSX5M— シオリ (@b00kmar_shiori) March 29, 2017
シオリさんがおっしゃる『ストレートで鮮やか』は、まさにあおいの魅力をそのまま言語化したようなものです。
僕も何度読んでも、そう感じます。
『苦しい残酷なことがあって、力強く歩んでいく。そして最終的には必ず生を肯定的に描く』
これが西さんに惹かれる僕の理由です。
まとめ←あおいは西さん初心者にぜひ読んで欲しい作品
僕は西加奈子さんのパワフルな言葉と、世界を肯定的にみるスタンスが大好きで、新作が出るたびに読ませていただいます。
なのでどの作品もおすすめしたいのですが、
西加奈子さん初心者!という方は、まずあおいから読んで欲しいと思います。
なぜなら、色褪せることない魅力を放った作品です。
西さんご自身もあおいのことを「つたないけれどいちばん透明な作品です」と自己評価しているよう、ほんとなんの濁りもないキラキラとした文章を全編を通じて書かれているからです。
面白すぎて、スラスラと読めるような内容なので、お時間のある方はぜひ読んでくださいね。