ピタゴラス音律とは?
ピタゴラス音律は、古代ギリシャの数学者ピタゴラスとその学派によって考案された音律(音階の作り方)で、周波数比 3:2(=純正な完全五度)を基本単位とし、そこから音階全体を構築する方法です。
特徴としては、完全五度(ドとソの関係など)が非常に美しく響きます。
ただし、五度を積み上げて音階をつくるため、純粋ではない音(とくに三度)が生まれます。これが「ピタゴラスコンマ」というズレの原因になります。
発見までの軌跡:なぜ、ある音同士は美しく響き合うのか?
紀元前6世紀頃の古代ギリシャ。
哲学者ピタゴラスは、ある日、鍛冶屋の前を通りかかります。
すると──
「カン…カン…トン…♪」
金槌が鉄を打つ音が、妙に心地よく響き合っている!
ピタゴラスは不思議に思い、鍛冶屋に入って金槌の大きさ・重さを調べはじめます。
そして気づきました
音がきれいに重なる(=協和音)とき、金槌の重さに「ある比」がある!
より確かな検証のために、「モノコード(単弦楽器)」を使って実験。
そのなかで弦の長さを変えると音が変わることを発見し、弦の長さの比が単純な整数比(例:2:3 や 3:4)のとき、音が調和して心地よく聞こえることを発見します。
モノコード(monochord)は、音楽と数学の関係を研究するために古代から使われてきた一本の弦を張ったシンプルな楽器です。
ピタゴラスが音の法則を発見する際にも使ったとされており、音律(おんりつ)や周波数の学習・実験に最適な道具なんです!
- 音の高さと弦の長さの関係→弦が短いほど音が高く、長いほど低くなる
- 整数比と音の調和(協和)→例:2 : 1/オクターブ/完全、3: 2、完全五度、美しく調和
今も音律(ピタゴラス音律・純正律・平均律など)の違いを実験的に理解できるということで使われています。
ちなみに、定規、木の板、ギターの弦、チューニングピン、ブリッジの代わりの棒などで自作モノコードもできますよ!
◆ 音楽は「数学」だ!
ピタゴラスはこの実験から、「音の美しさは数によって説明できる」と考えました。
彼は、
「音楽は数の調和でできている」
という思想を打ち立て、後に「ピタゴラス音律」と呼ばれる音階の仕組みを提案しました。
- 弦の長さを半分(1:2)にすると → 1オクターブ高い音が鳴る!
- 弦の長さを3:2にすると → 完全五度(ドとソ)という心地よい音の組み合わせになる!
この音律は、中世〜ルネサンス期の音楽理論のベースとなり、西洋音楽の礎となっていきます。
弦の長さの比 | 聞こえる音の関係 | 音楽での意味 |
---|---|---|
2:1 | 1オクターブ | 低いド・高いド |
3:2 | 完全五度 | ドとソなど |
4:3 | 完全四度 | ドとファなど |
◆ 世界はこう変わった!
この発見をもとに、音楽と数学が結びつき、音律や楽器の設計に活かされるようになります。
中世から近代にかけての西洋音楽理論の基礎が形づくられていきました。音楽だけでなく、「宇宙も数的調和でできている」というピタゴラスの思想は、のちに天文学や自然科学にも影響を与えることになります。
- 純正律(より自然な三度を重視)
- 中全音律(三度と五度のバランスを取る)
- 平均律(すべてのキーで弾ける実用的な音律)
といった他の音律に道を譲っていきましたが、
音楽と数学の深い関係を最初に明らかにした画期的な音律
として、現在も理論や教育の場で取り上げられています。
ちょっとした補足:本当にピタゴラスがやったの?
実はこの話、後世の創作である可能性も指摘されています。ピタゴラス自身の記録は一切残っておらず、彼の功績の多くは弟子や伝記作家による伝承。
しかしそれでも、「音と数」のつながりを初めて体系的に示した存在として、彼の名は歴史に刻まれました。
◆ 日常やビジネスへの応用!
ピタゴラスのように、「現象の裏に秩序や法則があるのでは?」と疑うことが、
まったく新しい発想やブレイクスルーにつながるかもしれません。
たとえば…
- 売上の波 → 曜日や気温と連動していないか?
- 顧客の反応 → タイミングや価格の変化でどう変わる?
「なんとなく」感じていることを数で見える化するのが、ピタゴラス的な思考法といえるかもしれませんね。