1.映画『彼らが本気で編むときは、』の詳細なあらすじ・ネタバレ結末
2.映画『彼らが本気で編むときは、』のキャスト紹介
『彼らが本気で編むときは、』は2017年に公開された家族愛に満たされた心温まるヒューマン映画です。
本作は『第67回べルリン国際映画祭』テディ賞審査員特別賞を獲得し、世界的にも評価された作品です。
公開当時は、イケメン俳優の生田斗真さんが”女装する”というのが大きな話題になりました。
映画『彼らが本気で編むときは、』の基本情報
作品名(原題) | 彼らが本気で編むときは、 |
公開日 | 2017年 |
上映時間 | 127分 |
ジャンル | ヒューマン映画 |
監督 | 荻上直子 |
脚本家 | 荻上直子 |
原作者 | 荻上直子 |
主題歌 | ゴスペラーズ 「True Colors」 |
キャスト | 生田斗真 桐谷健太 柿原りんか ミムラ 小池栄子 門脇麦 |
本作はトランスジェンダーや、ネグレクトといったマイノリティの人々が中心になっています。
上記はかなり社会的には弱い立場の人ですが、彼らの気持ちをしっかりとすくい上げており、本当に心から「いい映画だな」と思えるような映画になっていますよ。
映画『彼らが本気で編むときは、』はこんな人におすすめの映画です!
・映画を見終わった後に「いい映画だったな〜」と思える作品を見たい人
・家族のつながりや愛情を丹念に描かれた作品を見たい人
・トランスジェンダ・LGBTを作品に興味がある人
・荻上直子監督の渾身の作品が見たい!!という人
映画『彼らが本気で編むときは、』の簡単あらすじ
母に育児放棄された小学5年生のトモ(柿原りんか)は、叔父 マキオ(桐谷健太)と恋人でトランスジェンダーのリンコ(生田斗真)と共に暮らし始めます。
それはトモにとって初めての安らかで楽しい時間でした。
これまで母親から愛情をうけていなかったトモに優しく接するリンコは実の母親以上の母です。
やがてリンコはトモの本当の母親になりたいと思い始めます。
しかし、リンコへの偏見の為、彼らの純粋な想いは邪魔されてしまうのでした・・・
映画『彼らが本気で編むときは、』の詳細あらすじ・内容【どんなストーリー】
あらすじ・ネタバレ1 【母の失踪とリンコとの出会い】
小学校5年生の少女 トモの母親 ヒロミはシングルマザー。子供の事は殆どほったらかしで、トモは一人でおにぎりを食べたりして、母親にはあまり関わらない生活をしていました。
学校でも何となく一人になりがちなトモ。話すことが多いのは、バイオリンを習っていて、仕草が女の子っぽい男子生徒 カイでした。周りからも「オカマ」と思われているカイは、自分につらく当たらないトモを慕って一緒にいたがり、「ゲーム、しない?」などと帰りに待っていたりします。
トモはそれを少し鬱陶しく感じていました。
ある日、ヒロミは男を作って姿を消してしまいました。
仕方なく、トモは近くに住む叔父(ヒロミの弟)マキオを訪ねます。マキオは、度々子供を放って失踪する姉に呆れながらも、トモを自分の家に招きました。
「実は、一緒に暮らしている人がいる。とても大切な人なんだ。“姪っ子が来る”と伝えたら喜んでた」
家に向か途中、マキオはトモに言いました。
トモが家に入ると、食事の支度をしていたのはトランスジェンダーのリンコでした。
リンコの職業は介護士で老人ホームに務めています。性転換手術は済んでいるものの戸籍は男のままです。体格や顔立ちにも男性っぽい所が残っており、あいさつされたトモは驚きながらも「はぁ」と返事をして、心の整理を付けました。
リンコは、トモがやって来ると聞いて腕によりをかけてご馳走を作ってくれており、トモは久しぶりに家族団らんの雰囲気を味わうことが出来ました。
母ヒロミは暫く家に帰ってくる様子がなく、トモはマキオの家に厄介になることになりました。
「明日のお昼にお弁当、作ってあげようか?」
とリンコに言われ、一度は断りましたが、残念そうなリンコの表情にまけて作ってもらうことにしました。
次の日のトモは学校を休み公園に出かけました。お昼時、お弁当箱を開けると可愛らしいキャラ弁でした。トモは中をじっくりと見て、タコの形に切られたウィンナーをつまみ上げました。
自分の家に荷物を取りに行くと、カイが家の前で待っていました。学校を休んだトモを心配してきてくれたのです。「しばらくここには帰らないから、もう来ないで」と言うと、心配したカイに「おかあさん、帰ってこないの?」と聞かれましたが、無視して帰りました。
その日、家に帰ってきたリンコは、お腹を押さえてトイレから出てきたトモと鉢合わせします。
そして、すぐさまテーブルの上にあったお弁当箱を開けてにおいを確認しました。思った通り、中身は腐っており、それを食べたトモはおなかを壊してしまっていたのです。
「ごめんね、ちょっと押しつけがましかった・・・」
と謝るリンコに、トモは
「違うよ。あんまり可愛いお弁当だから、食べるのがもったいなくてとっておいたの。悪くなってるの分かってて今食べたら、おなかが痛くなっちゃって・・・」
と事情を話しました。
訳を知ったリンコは、少し涙ぐみながら正露丸を用意してくれました。
更に愛おしさが込み上げてきたリンコはトモを抱きしめようとしますが、拒否されてしまいます。
学校に行ったトモは、リンコの事を知りたいのか、性に関する本を図書館で読むようになっていました
そこへカイが現れ、校庭でサッカーしている6年の中に
「彼の事を考えると胸がキューっとするんだ」
と言う男の子がいる事を告白されます。
「僕、どうなっちゃうのか?」
カイに聞かれますが、トモには何も答える事が出来ませんでした。
あらすじ・ネタバレ2 【リンコの過去、初めてのニセ乳】
ある日、トモが帰宅して一人でゲームをしていると、いきなり若い男を連れた女性が入ってきました。
「鍵、かけなきゃダメでしょう!」
初対面にも拘らずいきなり言われて唖然とするトモ。
その女性はリンコの母・フミコで、若い男は再婚相手のヨシオでした。仕事で遅くなるリンコに代わってトモの面倒を見に来てくれたのです。
そして、夕食に連れて行ってもらった蕎麦屋でリンコの過去を教えてくれました。
中学生になったリンコは、自分の体と性が一致していない事に悩んでいました。密かに女性用下着などを付けるようになり、フミコもそれに薄々気づいていました。
そんな時、フミコは学校に呼び出され、リンコが柔道着や水着を失くしたと嘘をついて体育の授業のみをさぼり続けている事を知らされます。
そして帰ったフミコは、リンコに
「私、おっぱいが欲しい・・・」
と告白されます。
それをきっかけにフミコはリンコがトランスジェンダーである事を受け入れ、ブラジャーと、中にいれる毛糸の「おっぱい」を用意してやったのでした。
「私がリンコの最初のおっぱいを作ってやったの。だから、リンコを傷つけるものは容赦しない。例え、あなたの様な子供でもね」
横にいたヨシオが「ヤクザみたいだよ・・・」と引くほどの迫力で、フミコはトモに言いました。
あらすじ・ネタバレ3 【誰かを想う気持ち】
数日後、マキオとトモはリンコが働く老人ホームを訪ねました。
そこにはマキオの母で認知症が始まっているサユリが入所しており、担当はリンコでした。
面会が終わった後、施設の中庭にあるベンチで座りながら、トモから
「おばあちゃんはママが嫌いだったの?」
と聞かれたマキオは、嫌いではなく、愛して止まないけれど気が合わないんだろう、と答えました
「ある意味そうかもしれないけれど、そうしなければトモは生まれてこなかったんだよ」
と答えてやりました。
そして、ヒロミが祖母を捨てたと言っていた事を思いだし
「ママは、私の事も捨てちゃうのかな」?
と不安がるトモに
「ママは、自分の中の優先順位がうまくつけられない人なんだ。悲しい事に」
と慰めました。
そして、ヒロミが家を出てからすっと自分の世話ばかり焼いていた母の事をうっとうしく思っていた事や、病気になった母を老人ホームに預けられてホッとした事を告白しました。
「リンコさんとどうやって付き合い始めたの?」
と聞かれたマキオは、戸惑いながらも、母 サユリの体を丁寧に拭くリンコの姿を見て一目ぼれしたと答えました。
「元は男だったと知って物凄く戸惑った。けれど、リンコさんみたいの心の人にホレちゃうと、もう他の事はどうでも良くなってしまうんだよ」
と照れていました。
そこへ、勤務を終えたリンコがやってきて「お腹、すいたでしょう?」とコンビニで買ったおにぎりをくれました。それを口にした途端、トモは激しく嘔吐し始めました。
「大丈夫よ。この子はおにぎりあげとけば文句内の。ね、トモ、おにぎり好きよね?」
トモは、真っ暗な空間でヒロミの声だけが響く夢を見てうなされ続けていました。
夜までうなされ、目が覚めたトモは
「おっぱい・・・触ってみたい」
と遠慮がちに聞いてみました。
「いいよ。Eカップ。本物よりやや硬めらしいよ」
そっとリンコの胸に触ったトモはそのまま
「トモは赤ちゃんね~」
とリンコにからかわれながら、膝枕で寝ていました。
トモ、リンコ、マキオの3人は近くの土手にサイクリングに行きました。そして、お昼には桜が満開の土手でお弁当を広げしました。リンコはトモの好きなシジミのしょうゆ漬けと切り干し大根を用意してくれており、とても楽しい花見となりました。
トモがマキオ達と住むようになってから数週間が過ぎました。だんだんトモも3人の生活に慣れ始め、リンコからゲームをかたづけるように注意されても
「はいはいはい」
と生返事をして叱られたりしていまいた。
老人ホームでは、入居者と職員が一緒になって編み物をする時間がありました。
編み物の最中、リンコは隣にいた同僚の佑香に話しかけました。
「佑香ちゃん、キレイになったね。キレイさがあふれ出してる」
佑香は近く結婚する予定でした。
「貧乏人同士の結婚なんで色々大変なんです。この間も“ウエディングケーキ、自分で焼いたら安上がりなんじゃねぇの”とか言われてケンカしました。このままだと式なんて挙げられるかどうか不安で」
そう話す佑香の顔を、リンコはじっと見つめていました。
あらすじ・ネタバレ3 【理解されない事】
ある日、トモとリンコが買い物に行った時のこと、偶然そこにカイとその母 ナオミも来ていました。トモがリンコといるところを見たナオミは駆け寄ろうとするカイを慌てて制止しました。そして、洗剤を頼まれてトモが一人になった時を見計らって近寄り
「困ったら家に来なさい。あなたは一人じゃない。ああいう種類の人とあまり一緒にいない方が・・・」
と諭しました。頭にきたトモは、思わず持っていた洗剤をナオミにかけてしまいました。
警察が呼ばれたものの、被害届を出される事はありませんでした。
リンコはひたすら頭を下げつづけ、ナオミは何も言わずに立ち去りました。
家に帰ったリンコは
「何か言われた?もしかして、私の事?」
とトモに聞き、そういう時は編み物をしているといつの間にか悩みが通り過ぎていると教えました。
その時トモは、ときどき家の中で細長い、小さな帽子か指のない手袋に似た毛糸の編み物を見掛る事を思い出しました。
「それは私の煩悩。下の手術をした時に痛くて、痒くて。その時に編み物をしてやり過ごしたの。言うなれば、男根への供養。108個作ったら燃やして、戸籍を女に変えるの」
二人は笑い合い、トモはリンコに編み物を教えてもらいました。
その日の夜、リンコは自分が戸籍を女性にしたら、結婚して、トモを養子にできないかとマキオに相談しました。話を聞いたマキオは
「真剣に考えてみよう、二人で」
と前向きに考える事を約束してくれました。
次の日、トモが学校に行くと黒板にデカデカと「オカモトトモ、変態家族」と書かれていました。ショックを受けたトモは学校を抜け出し、母親と住んでいたアパートの近くで時間を潰していました。
すると、アパートに入って行くヒロミの後姿を見た気がして、急いで部屋に向かいました。しかし、そこにヒロミはおらず、気持ちがこみあげてきたトモはヒロミの服を次々にタンスから引っ張り出して破り、それに顔をうずめて泣き、いつの間にか寝入ってしまっていました。
夜、帰ってきたトモをリンコやマキオは問い詰めましたが、トモは
「母親でもないくせに…」
とだけ言って押し入れに閉じこもってしまいました。
一方、カイは自分が秘かに想っている男子生徒が女の子と楽しそうに話しているのを見て心がモヤモヤしていました。
また、母 ナオミからは
「異常だから、今後一切トモに近づいてはいけません」
と言われ、どうしたらいいか悩んでいました。
その頃、まだ押し入れに閉じこもっていた(ただし、誰もいないときには外に出てゲームをしたりしている)トモの所に、リンコが「差し入れ」と瓶入りラムネと糸電話を持ってきました。
「内緒話、しようよ」
最初の話始めたリンコは、男だった時の名前がリンタロウだった事、マキオの子供を産んであげられないなど自分ではどうしようない事を本当は悔しく思っていると告白しました。
そしてトモの番になった時、ヒロミの姿を見掛た事を打ち明けました。それを聞いたリンコは
「・・・出しっぱなしのゲーム、片づけてね」
と言って買い物に出かけてしまいました。
それから暫くして、リンコは検査入院をすることになりました。しかし、保険証の性別が男だったので、男性ばかりの大部屋に入れられてしまいます。
マキオが人権侵害だと看護師に抗議しても「空きがないので・・・」と取り合ってもらえませんでした。
そのやり取りを聞いていたトモは、涙を堪えながらリンコのベッドまで行き、傍らにあった毛糸と編み棒手に取ると、何も言わずに編み物を始めました。
その様子を見ていたリンコは
「偉いね。よくガマンしたね」
とトモを褒めてやりました。
ある日、トモが学校から帰って来ると、家の前でカイが待っていました。
ちょうど家にいたリンコも交えた3人でゲームをした後、皆でファミレスにケーキを食べに行きました。
ファミレスでケーキを食べながら、生まれ年のコインを持っていると幸せになると聞いて二人は一つしかない平成16年のコインを取り合ったりして、3人はずっと笑っていました。そして、そんな楽し気な3人の様子を外からじっと眺めている者がいました。
カイの母 ナオミでした。
あらすじ・ネタバレ4 【自分ではどうしようも出来ない事】
ある晴れた日、3人は正装して神社に出かけました。今日はリンコの同僚 佑香の結婚式です。
無垢姿の佑香にそっと手を振って祝福するリンコ。式は滞りなく、和やかに執り行われました。
る途中、川べりで休憩していたリンコは一心不乱に編み物をしていました。
「私、決めたの。さっさと供養を終えて、とっとと女になる」
マキオもトモに編み方を教えてもらい、3人は暫く編み物を続けました。
家に帰った3人はこれまでの編みあがった「ダンコン」を数えていました。
その時、突然マキオが
「トモ、このままずっと一緒に暮らさないか?」
と切り出しましたが、トモはただ驚くだけで、返事は出来ずじまいでした。
数日後、マキオの家に児童相談所の相談員 金井が訪ねてきました。
何処かから「トモが生活する上で好ましくない」と通告があり、調査にきたのでした。
リンコの姿を見た金井は明らかに動揺していました。
トモと金井が二人で面談をした結果、環境に問題はないとされました。しかし、3人は不穏な空気を感じ取っていました
その頃、カイの身にも大事件が起こっていました。
密かに想いを寄せていた男子宛てに書いた手紙をナオミに読まれ、破り捨てられてしまったのです。
恥ずかしさに耐え切れなくなったカイは、薬を大量に飲んで自殺を図りましたが失敗しました。
カイが病院に入院していると聞いたトモは、ナオミの目を盗んで病室に入り込みました。
「高そうな部屋だね。さすがは金持ち」
「せっかく死にかけたのに、どんな光景が見えるか覚えてないの?頭わっる~」
とワザとぶっきらぼうな口調で話してしましたが、カイがナオミから
「貴方はとても罪深い」
と言われたと知って
「アンタのママはたまに間違う。そんな事ない。絶対、ぜーったいに無い」
と励ましてやりました。
暫くして、3人はバスに揺られて海岸に向かいました。3人はバスの中でも海岸でも編み続け「ダンコン」は遂に108個が出来上がりました。
3人はそれらを砂浜に積み上げ、キャンプファイヤーの様に燃やして供養を行ったのでした。
しかし、それからすぐにトモの母 ヒロミがひょっこりマキオの前に現れました。
学校が終わったトモが家に帰ると、マキオやリンコと共にヒロミも待っていました。
ヒロミは特に悪びれもせず、形ばかりのお礼を言って、トモを連れて帰ろうとしました。
その無責任さに怒ったマキオはヒロミを引き留め
「トモは自分達が引き取りたい。姉さん、今回が初めてじゃないだろう」
と告げました。リンコも
「お願いします。トモの事、大切にします」
と頼みましたが、聞き入れてもらえませんでした。
「私は母である前に女なの。そんな事も許してもらえないの?」
と自分勝手な理由を並べ立てるヒロミは、リンコに
「許せません。まずトモを守らなきゃ。人として、大人として」
と言われて逆上します。
「アンタは母親になんかなれない。女でもないくせに。トモが生理になった時、どうすればいいか分かる?胸が大きくなってきたとき、最初にどんなブラを買えばいいか教えてやれる?」
とリンコを問い詰めました。その時、トモがヒロミを殴り始めました。
「リンコさんはご飯作ってくれた。キャラ弁作ってくれた。編み物教えてくれた。一緒に寝てくれた。どうしてママはしてくれなかったの?どうして、もっと早く迎えに来てくれなかったの?」
「・・・分かんないよ、そんなの。分かりたいけど、他にどうしようもないの・・・」
そう言ってヒロミは出て行こうとしますが、トモに
「行かないで!ママと一緒にいる!」
と泣きつかれて踏みとどまりました。
結局、トモはヒロミと暮らす事になりましたが、その日は先にヒロミ一人で帰りました。
その晩、リンコは
「もうゲームを洗濯物を片付けたりしなくて済むと思うと清々する」
と強がりを言いましたが、トモに「ごめんね・・・」と言われて涙ぐんでしまいました。
やがて、起きだしたリンコは何かを編み始め、徹夜でそれを仕上げました。
そして、タクシーに乗り込むトモにそれを渡しました。
トモが去った後、リンコは部屋の隅でトモが持っていた古びたタオルを見つけ、それの顔をうずめて泣き始めました。それを見たマキオは何も言わずに後ろからリンコを抱きしめました
元の家に帰ってすぐ、トモはリンコからもらった包みを開けてみました。
中に入っていたのは毛糸で編まれた2つの乳房でした。トモはそれをじっと眺め、そっと触ったのでした。
映画『彼らが本気で編むときは、』のキャスト
リンコ役:生田斗真)
https://www.instagram.com/p/CF6IZycslBa/トランスジェンダーの介護士。老人ホームで働いている。キレイ好きで料理や編み物が好き。担当している斎藤の「手診断」によると「心のキレイな人」。元の名前はリンタロウ。
小川マキオ(演:桐谷健太)
https://www.instagram.com/p/B9WmfsaBYx3/リンコの恋人。ヒロミの弟で、書店に勤務している。いつもセンスの悪いパンツをはいている。
小川トモ(演:柿原りんか)
https://www.instagram.com/p/B7M4-u0JcAo/マキオの姪。小学5年生。母の家出には慣れているが、内心は寂しくて仕方ない。切り干し大根やシジミのしょうゆ漬けなど、シブい食べ物が好き。
小川ヒロミ(演:ミムラ)
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トモの母。マキオの姉。男と付き合うたびにトモの世話を放り出して失踪し、すっからかんになってフラれる度に戻って来る。
フミコ(演:田中美佐子)
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リンコの母。「娘(リンコ)が世界で一番大事」と公言している。明け透けな性格で、空気を読まずに思った事を言ってしまう性格。
カイ(演:込江海翔)
トモの同級生。金持ちの家の一人息子。バイオリンを習っていて、音大受験を狙っている。同じ小学校の男子生徒が好き。トモとは気が合い、ゲームを一緒にする間柄だったが、周囲から「オカマ」だと疑われ始めてから距離を置かれている。
ナオミ(演:小池栄子)
カイの母。潔癖な性格。リンコの事を「異常」だと一方的に嫌っていてトモやカイから引き離そうとしている。
佑香 (演:門脇麦)
リンコの同僚。元ヤンのような口調だが、根は真面目な性格。結婚を間近に控えている。
小川サユリ(演:りりィ)
マキオとヒロミの母。認知症を患っている。夫を亡くしてから、特にヒロミには厳しくしていた。そのせいか、ヒロミとは疎遠になっていた。夫が浮気して家を出た時、悔しさを紛らわせるようとセーターやマフラーを編んでいた為に編み物が巧い。
斉藤(演:品川徹)
老人ホーム入居者。元は製薬会社勤務で、手を握るとその人の人柄が分かる。
映画『彼らが本気で編むときは、』の感想・評価
ツイッター上の感想・評価
https://twitter.com/almandjy/status/1313782779356700673『彼らが本気で編むときは、』を観た
リンコさんが美しかった…
久しぶりに良い映画に出会えたなぁ
きっと何年経っても時々思い返すんだろうなぁ— しーちゃん (@ccchan_pan) October 5, 2020
彼らが本気で編むときは。
見た!せつない。ずーっと心にくる。喉の奥がきゅうーっと辛くて切ないけど、すごくいい映画でした。— KABI (@chankabi10) October 5, 2020
彼らが本気で編むときは、 毛糸で編んだ大量のチンチンが宙を舞うところでめちゃくちゃ泣いた
— 牛ハラミ (@mea803) October 4, 2020
インスタグラム上の感想・評価
https://www.instagram.com/p/BRI0P6eDHE2/ https://www.instagram.com/p/BRLh53hBl42/
映画『彼らが本気で編むときは、 』監督は?原作は?
本作の監督は荻上直子さんです。
荻上直子さんといえばデビュー作『バーバー吉野』から『かもめ食堂』、『めがね』と続々と人気ある映画を世に送り出している監督です。
さらに、本作はなんと荻上直子さん自ら原作を書き下ろしました。
ノベライズ本も売られているんですが、それは映画やドラマのノベライズ、ノンフィクション、インタビュー原稿を中心に執筆する百瀬 しのぶというフリーライターが書き下ろしていますよ。
『彼らが本気で編むときは、』の ロケ地
日野市、稲城市、多摩市、国立市、立川市、町田市。23区内では、渋谷区、豊島区、千代田区(神保町)、足立区(綾瀬)といったあたりです。他にも、神奈川県や千葉県でのロケ撮影もありました。https://filmaga.filmarks.com/articles/1128/
ロケ地は、東京都をメインです。
特に映画のなかで人気のある「桜のシーン」は東京の”稲城北緑地公園”で撮影されたそうです。
『彼らが本気で編むときは、』の見所
いろんな母親像が描かれる
男と付き合うたびに失踪する母を持ったトモが、女になりたいと願うリンコと過ごした日々を描いた物語です。
そして本作では様々な母親像が描かれます。
・母よりも女である事を優先してしまうヒロミ
・子供の事を一番大事に思っているフミコ
・潔癖な性格が我が子を傷つけてしまったナオミ
・子供を愛していても気持ちが行き違ってしまったサユリ
トモは、リンコとマキオと生活して初めて家族団らんを体験します。
リンコもまた、一緒に時を過ごす内にトモが愛おしくて堪らなくなってゆきます。
3人で過ごす姿は、幸せにあふれた家族そのものでした。
リンコの母フミコは世間の目を気にせず子供の事を受け入れ、傷つけようとする者から守ろうとしました。
トモを愛し、守ろうとするリンコの姿はその心根を受け継いでいる様に思えました。
それでもリンコが性同一性障害であったが為に、愛に溢れ母親となるべき心を持っているにも拘らず、世間から異常な事と見られてしまいます。
実の母親という姿の陰にヒロミの育児放棄が覆い隠され、男として生まれてしまったリンコの姿の陰にトモへの思いやりが見えなくなってしまっていたのは悲しい事に思えました。
それでも実の母を慕ってしまうトモの姿も、必死に女性となり母となろうとするリンコの姿も、とてもいじらしく涙を誘いました。
マキオがリンコを好きになった時の様に、まず心を愛する事が出来れば素晴らしい事です。
しかし、現実には姿かたちに惑わされ、間違った判断をする事が悲劇の元となってしまうとも教えてくれる気がしました。
物語の最後、トモが元の家に帰って来た時、部屋はキレイに片付いていました。ヒロミの心に変化が起きた事の表れであって欲しい、と願わずにはいられません。
思えば、リンコの母 フミコが女性になりたいと望むリンコに最初にしてくれたのは編み物で「ニセ乳」を作る事でした。
そして、悔しい感情をやり過ごすにリンコがやるのも編み物です。
母になれない悔しさが込められたものであると同時に、母として出来る事の象徴でもある「ニセ乳」がトモへの別れの贈り物と言うのが感慨深かったです。